壺坂幻想 (講談社文芸文庫 みB 2)
壺坂幻想 (講談社文芸文庫 みB 2) / 感想・レビュー
梅村
私小説としての色合いが強い短編集。盲目だった祖母や多くの女に逃げられ職を転々とした叔父、極道に身を染めた事で転落した祖父など、著者自らの親族への追想が書かれていますが、とりわけ表題作の『壺坂幻想』が素晴らしいです。『壺坂霊験記』の舞台であり、盲人の集まる壺坂寺に詣でたいと生前言っていた、祖母の本意はどこにあったのか。もしそこを訪れたなら、祖母は他の多くの盲人達のように故郷を捨てたのだろうか。「なが生きしとると、見んですむことを見る」という祖母の最期の言葉が刺さります。
2015/03/28
hirayama46
はじめての水上勉。おそらくは自らの家族を描いた私小説的な連作短編集。全体的に乾いた静かな筆致で、それぞれの異なる不遇、十人十色の思い通りにならない人生が語られます。しみじみ良い本でした。
2019/02/28
shizuka
作者の祖母、叔父にまつわる思い出集。小説を読んでからこの随筆を読んだ方が、より作者の心情に近づけるような気がする。背景になることがおおい、寂しくて、侘しくて、貧しくて切ない情景。いつもそこに魅かれる。そして淡々として感情が入らない文体。故にじんわりと心にしみ入り、そのままじわじわと広がって忘れられなくなる、そんな1冊。
2013/05/07
焼き鮭三郎
淡々とした飾らない筆致のおかげか、作者の追想に自らが溶けて同化していく。心の中にじんわりと広がったものが忘れられない。そんな作品でした
2022/07/14
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