水の女 (講談社文芸文庫 なA 7)
水の女 (講談社文芸文庫 なA 7) / 感想・レビュー
市太郎
エロい・・・という感想は馬鹿すぎるが、正に男と女の性のぶつかり。結構衝撃的でした。前半は男側に視点が添われ、女はただ「女」としか表記されない。後半二作品でようやく女にも名が与えられ、その内面も描写され物語を動かす主人公として機能し始める。・・・が、男の作家であるが故か、女の本質に迫っているとはどうしても思えず、結局、女とはなんだ、という思いが強まっただけだった。ここにある性は「愛」等という安っぽいメロドラマではなく、動物としての本能の営み。ただ欲望を貪りあう二頭の獣。
2014/04/30
松本直哉
海、川、雨、物語の中に常に水がある。「鷹を飼う家」で、女が夜中に床を抜け出して素裸で川で泳ぐ美しい場面では、女は水によって洗い清められ、水に溶けて水と一体化するかのようだ。反対に、川をコンクリで固めて魚を殺し、トンネルを掘ってため池を干上がらせ、水に刃向かって来たのが男たちだった。ゆきずりのボロをまとった法師が水を一杯と頼むのを断ったとき、法師が立ち去ったあと井戸の水が塩辛くなって飲めなくなった逸話では、法師はマレビトとして微行する神であるかもしれず、水を軽視する男たちに懲罰を加えているようにも見える。
2024/06/22
まーしゃ
官能小説なのか文学作品なのか… 中身は欲望剥き出しのエロなんですが中々読み進まなかった。短編集なので1つづつ長編の合間に読む感じで読了。
2017/09/28
こうすけ
かつて対談で村上龍が激賞していた、中上健次の短編集。中上作品とはあまり相性がよくなかったが、これはとても良かった。どすぐろい性愛を鋭い文章で描いていく。男も凄まじいが、女たちも力強い。『鷹を飼う家』がとにかく好き。
2023/02/14
メルキド出版
「水の女」中上は初期代表作を読んだぐらい。本作はそのなかでも端正だった。路地の共同体、姦淫、肉体労働、蕩尽。ハードな現実で優しさと哀しみを書いている気がした。田中慎弥、西村賢太、車谷長吉より好きかな。
2023/06/02
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