わんぱく時代 (講談社文芸文庫 さE 7)
わんぱく時代 (講談社文芸文庫 さE 7) / 感想・レビュー
ハチアカデミー
少年時代の回想録という体であり、春夫流の『坊っちゃん』である。日露戦争と時を同じくして開戦となった「とりこ」という戦争ゴッコを描く前半、そこで闘った友人とのそれぞれの青年期が語られる後半にわかれる。仲良くなることを目的とした戦争に全力で打ち込む少年たちと、国を良いものにせんとの志半ばに死ぬことになる大逆事件の犠牲者たちが対比させられる。作家自らの郷里である熊野・新宮も舞台となった大逆事件を、「事実を尊重すべき裁判官が針小棒大化した一種の創作」と、らしからぬ強い言葉を使っている所にその怒りの重さを感じる。
2014/12/01
ぱせり
親の事情により、才能をもちながら夢を断念せずにはいられなかった幼友だち(ことに女ならばなおさら)が、誰かを恨んだり羨んだりするでもなく、出来る限り懸命に道を切り開こうとしている姿が印象に残っている。夢中で遊び、遊び切るためにだけ頭を使った日々は、後からふりかえってみれば、なんて甘美で、輝かしかったことか。
2024/11/14
あや
自叙伝かと思ったら嘘も入ってると聞いて困惑。話はとても面白かった。佐藤先生の事をもっと調べて判別できるようにしたいなぁ。
2018/03/29
AR読書記録
これは日本版『飛ぶ教室』だ...! 日本の少年小説を代表するものとして世界でも読まれておかしくないものだろう...! と思いながら読んでいたけれど,少年たちのその後が,少年世界とは相容れない醜悪な“大人の世界”までが描かれていることで,読み終わる頃にはずいぶん印象が変わってしまいました.仮に子どもたちの”戦争”が爽やかな大団円を迎えて終わっていたら,小説としてはすごく口あたりの良いものになっていたでしょうけど,これで最後まで読んでこれを物した著者の心境を思えば,やっぱりこの形にならざるをえなかったろうな.
2013/04/09
void
【★★★★☆】ロマンチシズム溢れ、「とりこ(戦争ごっこ)」という緊迫感も然ることながら、自然・環境・人物に向く頭脳明晰で鋭利な判断が、それに基づく行動力が「わくわく」感を呼び覚ます。後半、青年期以後はその感動が薄れてしまったが、それでも素敵な小説でした。
2011/07/30
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