現代沖縄文学作品選 (講談社文芸文庫 かV 2)
現代沖縄文学作品選 (講談社文芸文庫 かV 2) / 感想・レビュー
燃えつきた棒
それぞれに読み応えのある作品ばかりだ。 これらの作家達は、骨を拾い、在りし日の思い出話を聴き、墓を立て、墓碑銘を刻んでいるかのようだ。 ここには、真の独立と平和への強い願いが込められている。 あらゆる悲惨も無念も、時が経てば忘れられてしまう。 彼らは、自らユタ(霊媒師)となって、死者達が見た決して忘れてはならないことを伝えてくれているのかも知れない/ 大城貞俊「K共同墓地死亡者名簿」: 私の住む村には米軍の野戦病院があり、捕虜収容所があった。そこで出た死者を埋葬するための名簿が、父の作成したそれである。
2023/12/16
ハチアカデミー
多彩な沖縄の作家を集めたアンソロジーであるが、やはり目取真俊「軍鶏」がずば抜けた傑作。敗者として、勝つことの出来ない者として描かれる少年の悔しさは、沖縄という場所をも表象している。オーラルなウチナーグチ(沖縄方言)で語られる崎山多美「見えないマチからションカネーが」も異色作品。意味が分かる/わからないの境界を越えて、伝わる作品足り得ている所が不思議な短編である。次点として、私小説風の山之口貘、戦争文学の集られざる側面を描く大城立裕、沖縄とフィリピンをつなぐ崎山麻夫の作品が印象に残る。良いアンソロジー。
2013/03/18
otmsy
「沖縄」を前にしたとき、いかなる態度を取ればよいのか。歴史と社会問題の知識が互いの橋渡し的な役割を果たすこともあるだろう。だが、小説の読後感として残るのは、ひた隠しにしてきたはずの他者性であり、異質性だ。可視化された彼我の隔たりの大きさに、共同体とは想像の産物ではないかと思ってしまう。同情や無関心を使い分ける私の態度を告発するかのような小説群に冷や汗をかく一方で、影の部分を見ることはスリリングな体験でもある。…と書いてしまったが、いかにも編者に乗せられた感想かなぁ。個人的には「野宿」の筆致が好き。
2011/09/08
押さない
「鱶にひきずられて沖へ・安達征一郎」「K共同墓地死亡者名簿・大城貞俊」「棒兵隊・大城立裕」「☆ダバオ巡礼・城山麻夫」「☆見えないマチからションカネーが・城山多美」「伊佐浜心中・長堂英吉」「☆カーニバル闘牛大会・又吉栄喜」「☆軍鶏・目取真俊」「鬼火・山入端信子」「☆野宿・山之口獏」解説・川村湊
2017/07/02
えみーちゃん
沖縄だからこそ生まれた短編達。さらに、どの短編も常に“死”が意識されている。沖縄の明るいイメージとは裏腹にどうしても意識しなくてはならないその影を見事に書いた短編集である
2011/08/09
感想・レビューをもっと見る