鞆ノ津茶会記 (講談社文芸文庫 いC 16)
鞆ノ津茶会記 (講談社文芸文庫 いC 16) / 感想・レビュー
さらば火野正平・寺
先日ふくやま文学館に行った。殆ど井伏鱒二記念館と言ってよい資料館だった。そこの売店で本書が売られており、読みたくなった。井伏最晩年の長編小説と言うが、さほど長くはない。安土桃山時代の備後(広島県東部)・鞆の津。宮崎駿『崖の上のポニョ』や坂本龍馬のいろは丸事件の舞台としてそこそこ有名な港町である。そこで安国寺恵瓊や小早川隆景の家臣達が行う茶会の記録形式の物語。不思議な歴史小説だ。当時の茶会の様子(茶室、メニュー等)と武将達の雑談で秀吉~関ヶ原前夜迄を描く。何故か面白い。茶会って飲酒して飯も食うのね。
2016/02/13
YO)))
本能寺の変の前後から秀吉の朝鮮出兵、関ヶ原の戦いの前夜までの時節に、福山は鞆ノ津で開かれた茶会の記録、という体裁で書かれていて、地場の武将たちが茶碗酒をあおりながら時勢の変転を語ったり秀吉の悪口を言ったりしている様が面白く描かれている。けっこう変な本だと思う。
2021/09/06
河内 タッキー
本文ではさらっと話題に上がるだけだが、佐々成政の黒百合の話や、宗湛の遠浦帰帆の掛け軸の話など、気になって後で調べたら、小さな記憶のかけらが繋がり、簡素な文の奥に含まれる物語が濃密だ。何より、本能寺あたりからから関ヶ原にかけての時代を広島からの視点で見ているのが面白い。
2019/05/21
A.T
戦国時代の戦記を茶会の中で交わされる会話等を記録した茶会記の体裁で小説にした…という凝った設定。茶会記の出席者名という形で登場するのは、当地 鞆ノ津のお館様 小早川秀秋に仕える武士の数名と安国寺恵瓊。それらの人々が朝鮮出兵から関ヶ原の合戦までの数年間の戦の合間をぬって入れ替わり立ち代り茶会に花を生け、茶を点て、飲み、酒肴を豪胆に酌み交わす…戦中閑ありの生活感がにじむ。
2017/01/14
Seagull
茶会で供される料理や濁り酒、あるいは掛け軸や生花など、場を表現される文豪の手法はさすがと唸らされます。
2014/11/08
感想・レビューをもっと見る