丸谷才一編・花柳小説傑作選 (講談社文芸文庫 まA 5)
丸谷才一編・花柳小説傑作選 (講談社文芸文庫 まA 5) / 感想・レビュー
ハイランド
花街柳巷、なんて時代と艶を感じさせる言葉だろう!実生活ではこれ程縁のない世界も無いのだが、小説で読むと何故か懐かしさに満たされる。今もこういう世界はあるのだろうか。風俗とはまた欲ばかりで色気も味もない言葉。名前はよく知っているが読んだことの無い、これまた時代を感じる小説家達の作品に触れられたのは貴重な体験、吉行淳之介、島村洋子はお宝を見つけた喜び。永井荷風の美学もね。志賀直哉の愛欲は勘弁。たまにはこういうオムニバスもいいね。本書は丸谷才一の最後の編纂。彼の軽妙なエッセイや対談がもう読めないと思うと寂しい。
2016/07/03
マヌヌ2号
ふだん読まない作家たちのふだん読まないジャンルの小説が並んでおり、脳内のふだん使わない箇所を総動員して読むことになった。とても疲れた。お気に入りは、大岡昇平「母」。私小説的な雰囲気の漂う話で、なんだか首尾一貫しない、しかしいとおしい、こまった人である“母”の姿が終始印象的な一篇。ほかにも、佐藤春夫「哀れ」は、時代がかっている部分もありつつ、ほんのりといい気分になる短篇で、これもしみじみよかったなぁと
2024/10/07
うずまきねこ
杉本秀太郎の「解説」からの引用。「丸谷才一の説を要約すれば、花柳界を舞台とする小説だけではなく、バーのマダム、女給が一働きも二働きもする小説も、私娼が暗い陰から現れる小説もここに含める」ようで、明治以後の日本文学に大変多い小説ジャンルらしい。本当にさまざまな形の関わり合いが収められている。時代によっては、認可されている交際もあるので、全てを今の価値観と比べて見ていくのは難しいし、もったいないことであろう。
2014/09/05
あにこ
思っていたより、ドロドロ話のてんこ盛りという感じではなかった。本来の花柳界とはほとんど無関係な話も多かった気がするが、それも含めて丸谷才一のプラン通りだそう。阿部定もの二作の独特な雰囲気がかなり気に入った。他には『妻を買う経験』『葡萄棚』が好きだった。『妾宅』はもう評論としか思えず多少辟易。そして相変わらず丹羽文雄は面白くない。文庫で1700円という値段を考えるとちょっと不満。
2014/09/11
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