遠藤周作短篇名作選 (講談社文芸文庫 えA 8)
遠藤周作短篇名作選 (講談社文芸文庫 えA 8) / 感想・レビュー
青乃108号
俺は文庫の最後に載ってる解説などは読んだ事がなく今回も読まず。遠藤周作は「海と毒薬」たった1冊読んだきりで決して詳しい訳ではないのだけども、確か子供の時分に兄が遠藤の「怪奇小説集」という本を1冊持っていて、こっそり盗み読みしてみたらこれが凄く面白かった記憶があり、これもいけるかも知れん、と思い読んでみたのだ。13編も収録された短編集は遠藤の私小説風味であり、結核で三年入院した話とキリスト教関連の話が複数の短篇で何度も繰り返される事に辟易した。けれども「夫婦の1日」には大変感銘を受けた。これだけで価値あり。
2023/08/24
Gotoran
遠藤周作の文学・人生・宗教観がすべてわかると云う13編の短編を収録。僅かな不安感から自分の良心を裏切る弱い男、拷問の恐怖に耐えられず転向する切支丹、大病から奇跡的に生還した男と身代わりに息を引き取る九官鳥、捨てられてやせこけた犬の悲しい目,きたなく汚れた稚拙な聖母の絵…。情けなく、うらぶれた弱々しい、しかしどこか懐かしく,親しみがあり,ユーモアさえ感じられる。遠藤周作の代表的長編作品の源泉とも云えるという数々の短編を堪能した。
2023/06/29
mayumi225
遠藤周作の心象風景を垣間見ることのできる本。読むのに少し時間がかかったが,その価値があった。遠藤周作の作品では私は「深い河」を偏愛していて,他はそこまで入り込めなかったのだが,この本を読んで,彼が生涯,執拗に書き続けたことが前より分かった気がした。長編が油絵だとしたら,この本はそのための習作スケッチを集めたもので,だからこそ骨格の線がよく見える。繰り返される母・キリスト・自分・動物といった主題の物語も良いが,夫婦を描いた「パロディ」「夫婦の一日」,冒頭の「シラノ・ド・ベルジュラック」もとても印象に残った。
2017/09/22
kumako
入院中の自分を癒すために買った犀鳥が自分の難しい手術中(成功した)に死ぬ。息子を犠牲にしてまでイエスに生涯を捧げた母が、夫とは別れて最期の時に息子は繁華街で遊んでいて一人で逝く。善(イエス?)に縛られ続けて、それが偽善であることに苦しむ利光。「夫婦の一日」の中に“こんなことをやったって無意味じゃないか。しかしこれが人生だ”とある、信仰も善行も自分を救ってくれない、むしろ苦しめる事もあるのかも知れないけど人はそれを行のは何故なんだろう?
2021/10/19
あつ子🐈⬛
遠藤作品デビューです。読んでいてどんどん辛くなった。いつか再読したなら、また違った感想を持てるだろうか。人間の許されないほどの弱さと哀しさに胸がつぶれる。
2017/11/18
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