折口信夫対話集 安藤礼二編 (講談社文芸文庫 おW 4)
折口信夫対話集 安藤礼二編 (講談社文芸文庫 おW 4) / 感想・レビュー
井月 奎(いづき けい)
対話集と言いつつ折口の発言は比較的には少ないが、文学者との対話、とくに川端、谷崎との鼎談は笑顔が見えるようで楽しげである。そして、仏教学の巨人である鈴木大拙を加えた宗教談話は鈴木が仏教と神道を通して日本と日本人の未来のことを考えているのに対して、神道側の人たちが、折口も含めて現状の神道への言及をのみ行っているのがとてもおしい。折口と鈴木の発言の接触は緊張感があると同時に何かが生まれる予感を孕んでいるだけにおしいのである。架空の話は不毛だが対談をしていたら、宗教の新地平が見えたのでは、そう思ってしまう。
2019/03/12
chanvesa
口数は少ないけど、重要なことを絞り出すように語る人。折口信夫はそういう人なのかもしれない。相手がえらい人や、時代の変わり目にも信念を貫く。民俗学や神道のことは何にもわからないので、柳田国男や鈴木大拙との対立点が何なのかあんまりよくわからなくて、なかなか難しい。169頁「なぜ日本人は旅をしたか、…これはどうしても神の教えを伝播するもの、神々になって歩くものでなければ旅は出来ない」というマレビト論(異人論)は、折口の言いたいことを端的に言い表した言葉のように思う。
2017/11/29
壱萬参仟縁
文人や民俗学、日本文化の重鎮が多数。「日本人の頽廃」はただならぬ(104-05頁)。戦争だけではなく、昭和の初めから現れていたとのこと。今は平成もかなりいっているが、どうなのかな。頽廃しないためには、ひたすら活字の海にまみれる以外ないのだろうけど。霊魂やアニミズムの話題にも事欠かない。「民俗学と民族学」(225頁~)。悩ましい問題だな。まず、分析対象たる共同体がある。それで、社会学なら民俗でも民族でも双方を見ると思う。文化経済学でいえば、目に見えない文化資本は民俗となるだろうか。文化を捉えることの困難さ。
2013/08/19
うえ
折口「戦争の精霊というのは皆家々に所属している精霊…戦争を司るから強い神だと考えたのは後世のことで、つまり神と精霊との区別が無くなって了った時代のことです…本当の武家時代になると、武家の祭っている神は戦争に強い神でなければならないと考えた。例えば甲州の武田が諏訪の神を自分の氏神にして、日本第一大軍神と称した。けれども、諏訪の神は戦争に敗けた神様で、戦争に敗けたものを救ってやろうという悲願を神様が起こしていると説くでしょうけれども、それでないと諏訪の神様が戦争の神様になる理由がないかと思います」
2018/06/05
メーテル/草津仁秋斗
文学者、民俗学者、神道学者、様々な折口の面が垣間見られる。川端と谷崎との鼎談が個人的には好きだった。
2015/11/24
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