戦後詩 ユリシーズの不在 (講談社文芸文庫 てB 4)
戦後詩 ユリシーズの不在 (講談社文芸文庫 てB 4) / 感想・レビュー
かふ
寺山修司の「戦後詩」は「荒地」派の否定から始まる。それは死の観念に憑かれた難解詩よりは今を生きて歌う星野哲郎の流行歌(演歌)を評価する。そこの抒情歌に対する評価と好みなのだろうか?今では星野哲郎の演歌など誰も評価しないと思うが。たとえば黒人ブルースを歌ったラングストン・ヒューズの詩とかには心惹かれた。ケストナー『抒情的人生処方詩集』とか。そうした言葉の癒やしとしての詩に惹かれる。
2024/06/14
しゅん
再読。寺山修司は印刷メディアの大拡散による詩の歴史的変化について語っており、その変化に無自覚な印刷詩を挑発する。また、詩を実際生活の逃避場にしないためにも、生活の詩的強度を高めることを欲する。それ故か、寺山の詩はストレートに入ってくるし多分にセンチメンタルに響きつつ、萎縮した感じがなくあっけらかんとしている。ヒップホップを知っていたらきっと思い切り好きだっただろう。論理で締めず、詩の引用で各章を終わらせる構成が良い。短歌同人を慰める老人の会と腐す場面は思わず笑ってしまった。
2023/06/29
yamahiko
50年前、寺山20代の作品。今なお新しい。書くという体験を通して新しい世界に踏み込んでいくために存在する、と詩の存在意義定義する。まさに寺山の生きざまそのものではないだろうか。
2016/05/04
A.T
詩や俳句の創作者と読者の関係を同人誌的帰巣集団のなかで完結することの安直さを指摘する。ジャンルの閉塞性に苛立ってる寺山さんに同感!
2013/11/24
oz
初読。寺山の眼に戦後詩は死に向かう詩学と映じたようである。その詩学もレトリックが高度になればなるほど、主題である死を空転させ、詩自体の虚構化が進行したという。この戦後詩の史的展開を論じた部分は吉本隆明の「修辞的な現在」にも通じる。さらに、詩壇・結社は相互観賞を目的とした福祉団体であるとか、そもそも詩を読んで慰められる程度の悩みなど悩みのうちに入らない、という詩の外部からの辛辣な批判には苦笑しつつも、戦後詩に本書の批判を超克するだけの史的展開がなく、現代詩にも今後の詩にもないであろう事実を認識させられる。
2016/08/09
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