狂い凧 (講談社文芸文庫 うB 3)
狂い凧 (講談社文芸文庫 うB 3) / 感想・レビュー
松風
個人所有の「思い出」としての戦争。共有を拒む身振りが垣間見えるのに、でも、描かれたものは全て“腑に落ちる”。高校時代『桜島』を読んだ時の衝撃が、さらに練れた感動に昇華された感あり。
2014/11/20
ステビア
「幻化」を準備した作品、と解説にある。俺もそう思う。この作家は好きだ。
2014/09/05
つーさま
どの登場人物もひょんなことから人生が思わぬ方向へと狂い出す。主人公の英介は、戦争中自ら死を選んだ弟・城介をはじめ家族にまつわる記憶を北風を受け暴れる凧を操るように必死になってたどり続ける。その姿は、人生を運命という一言で片づけることを頑なに拒んでいるように見える。もっと言えば、どうしようもできない偶然に己の身を委ねているようにすら感じられる。冒頭とラストを飾るシーンは、まさにそうした姿勢を象徴するようで、小説の中でもとりわけ印象的。アイロニーとユーモアとがいい具合にミックスされた力作。
2013/10/21
刳森伸一
戦時中に自殺した双子の城介を巡る回想を軸に進む物語。戦争や自殺を背景に浮かび上がる人間関係や主人公の栄介が各人に抱く感情といった微妙なものが静かにそして淡々と語られるだけといえば、それだけなのだが、なぜか目が離せず、ある種の興奮を持って読み進めてしまった。捉え難いものを捉えようとしている様がそうさせるのだろうか…
2018/06/06
APOM
最後までじっくり味わって読んだ。主人公の栄介、その双子の弟・城介のキャラクターがとても良い。二人の対比が面白かった。じわじわと染み入る良作。「幻化」も読みたい。
2013/12/04
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