地獄変相奏鳴曲 第四楽章 (講談社文芸文庫 おU 3)
地獄変相奏鳴曲 第四楽章 (講談社文芸文庫 おU 3) / 感想・レビュー
まどの一哉
家を出てバスや電車を乗り継いで東京駅から新幹線に乗り組むまでの時刻表から進行状況まで綿密に書かれ、また列車が目的地に到着するまでに主人公が読書したり思い出したりした文献の内容が次々と紹介される。これが日本古典から漱石やジンメルまで多岐にわたり、めまぐるしく脳が刺激されて楽しい。 大西巨人の必要以上に堅苦しく精密で粘着質の文章は、美しい文体などとは無縁の実に奇天烈なもので、小説としてはルール違反であり邪道ではないかと思うが、大げさななりふりの割に大変わかりやすく楽しいので、やはりこれは小説なのだなあと思う。
2017/05/29
蝉、ミーン ミーン 眠ス
頭でっかちな人間がその頭のなかだけで考えた物語。描かれている登場人物たちの言動には人らしいところがなく現実味に欠けている。神聖喜劇くらい突飛な登場人物であればそのリアリティの無さが気にならなくなり単純に話のやりとりを楽しめるんだがこれは中途半端だ。
2014/09/21
e.s.
4組の「太郎」と「瑞枝」が立ち代わり登場する4つの小説群は、大西における『豊饒の海』のように思われる。三島の『豊饒の海』は、聡子が清顕の存在を否定することにより、4つの転生物語が虚構へと崩れ落ちる。では、大西の4つの小説群は、ただ2人が海へと消えることで、物語を閉じることになるのか。その最終的な答えは『地獄篇三部作』の登場を待たなければならない。
2015/05/11
YY
なんだか最後の最後になって種明かしをしたがったせいかパワーダウン。理由のない自殺のくだりは面白かったが。
2014/11/26
澄川石狩掾
太郎と瑞枝のやりとりが、丁寧な言葉でなされていて、よかった。私も二人のような恋愛・結婚をしたい。「死のこと・死の周辺のこと 6 二つの弔辞・その一」では、『神聖喜劇』の時期の後の東堂太郎を思わせる、上等兵に進級した太郎が出くわした「大便事件」描かれるが、この辺りの話ももっと読んでみたかった。
2024/11/22
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