『深い河』創作日記 (講談社文芸文庫 えA 9)
『深い河』創作日記 (講談社文芸文庫 えA 9) / 感想・レビュー
アキ
遠藤周作が死ぬ直前まで付けた日記。1990年(平成二年)八月から平成五年五月まで、断片的に付けている。最後は奥さんへの口述筆記。その間、最後の長編小説となると自身も自覚していた「河」の構想から、小説が出来ていく過程を、迷いながら苦しみつつ内情を吐露している。もちろんこれは有名作家の日記として後に出版されることを意識していただろうが、病上にあっても小説の一節のことが頭から離れない。しきりにつらい、みじめだと嘆息しながらも小説への執念は衰えない。「宗教の根本にあるもの」が、小説・深い河の中心の考えと思えます。
2023/09/18
mayumi225
「深い河」が昔からの愛読書すぎて,格調高き講談社文芸文庫の棚にこの題名をみつけたときに抗うことができなかった(1400円はちと高いですけどね)。私の中では完璧なあの作品に,違った書き出し,違った名前,違った結末があり得たことを知るだけで不思議の思いにとらわれる。創作ってすごい。頭を殴られるように感動した10代の頃には気づけなかった細部を味わうために,また深い河を再読したい。
2017/09/02
Viola
『深い河』創作中の体調や模索の過程を記した日記。何度も書き直して最後の長編に臨む姿が記されている。しかし、その後の三浦朱門と河合隼雄の対談によると、作家が創作日記を残すことは珍しく、あざとさを感じるとボロクソに言われている。遠藤の性格も知っていての愛ある対談に、別の一面も見られた。遠藤が宗教観を語る一文も添付されていて、決して模範的信者とは言えない考えが、『深い河』の大津や『沈黙』にも繋がっていると感じる。噛みしめたい記述も多々あった。「復活は蘇生ではない。」「日常にあるものから信仰は始まる」
2017/01/14
スコットレック
図書館本。自分が読んだのは文庫ではない方。遠藤周作、本書を読んでいるとしょっちゅうどこかに出かけたり人と会ったり。アクティブな人だったんだなあ。淡々とした文章の日記が何か可笑しい。日常の中に突然非日常が混ざるのが読んでいて楽しい。(ゾウの夢、妙な女性からの電話)それと本書は20年以上前に出版されたが、P144に"このごろ世間を騒がせている統一教会"なる文が出てきてびっくりさせられた。最後の方の"宗教の根本にあるもの"の章もすごく良かった。遠藤周作の宗教観、日本人の多くが腑に落ちるものだと個人的に思います。
2023/01/16
がんもどき
図書館本。 遠藤周作の最後の作品「深い河」が書かれた様子がわかる本。中々書けなくて呻吟する様子や、病気のことから「深い河」が絶筆になることを予想していた様子がうかがえる。最後の腎臓手術の感想が痛々しかった。
2020/08/14
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