猫道 単身転々小説集 (講談社文芸文庫 しL 3)
猫道 単身転々小説集 (講談社文芸文庫 しL 3) / 感想・レビュー
yumiha
剣道や柔道あるいは茶道や華道のような「猫道」と思い込んで読み始めた。それなのに猫が登場したのは、241ページ。それまでは延々と住む場所探しだった。オートロックや風水にこだわり、不動産業者やら男性編集者やらにメタクソに扱われるいきさつ。笙野頼子だもの、体調を乱し精神的にも追い詰められ夢と現を行き来する。私もいずれ引っ越さなければならないので、かなり身につまされた。そのプレッシャーをあれこれ数え上げ思い浮かべると、なかなか寝つかれなかった。また、全く猫と暮らした経験もないままに猫を飼い始めたいきさつに驚いた。
2020/04/02
ふるい
生きるってしんどい。おまえはいったい何者か、と問われ続けることは。猫。ただ寄り添ってくれるものの有難さ。
2018/11/10
ふくしんづけ
そこにあの人が立っていて、あなたはあなたですかと問うと、私は私の鏡像だと言うので、あなたはあなたの鏡ですね、と言うと、違う、私は影だ、と少し憮然として答えてくるのだ。そういう印象があった。影はいつまでもつかず離れず、その実感を掴めずにいるのだった。短編と長編合わせて七つの小説をひと続きの私小説と読むのは易い。だってそうじゃん、と一歩距離を取れば思うのだが、それでも文学という影は正体を失くしてついてくるのだ。何がここまで書きたがらないことを書かせるのか。映画監督のゴダールのような。明から朧になっていく世界。
2020/12/17
nyanlay
初めての作家さん。本人も既述しているように『エッセイ』ではなく、『私小説』ですね。普段書かれているのは怪奇的な内容らしいので、きっとそちらは手を出さないと思います。図書館で借りて来て、プロフィールを読んで、難病を患っていると知りました。部屋を探している件で体調不良が度々出て来たけれど、診断前だったのでしょうね。知り合いの姿と重ねてしまいました。
2017/06/13
葛井 基
ものすごく難解で抽象的なだけど心情がわかる観念小説から始まって、居場所もなかった作家が、猫と暮らすという呪文が現実となってヒトになっていく。いつにも増して心を抉る作品集。
2017/03/24
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