雲は天才である (講談社文芸文庫 いP 2)
雲は天才である (講談社文芸文庫 いP 2) / 感想・レビュー
春ドーナツ
表題作(当時「天才」という言葉が流行っていて、何にでも「天才」を添えた、みたいなことを解説で関川氏が指摘している)と「葬列」を読み進めているときに、珍説が閃いた。「町田康さんの文体のルーツは石川さんの散文ではないか」というものである。「雲」を関西弁に脱構築すると、町田さん独特の世界が広がる。ような気がした。付記。石川さんは感性の赴くままに、「可愛かろ」と思って雲を天才として称えた訳ではなくて、ある作中人物のことを指している。はずです。
2017/12/11
氷柱
526作目。10月1日から。真の土俵が小説ではないのだからある程度は仕方がない。本編は終始いまひとつと言った感じで進むのだけど、終盤に掲載されている作者自身の来歴と合わせて読むと味わいが出てくる。私小説だからこそ避けられない平坦さは否めないものの、作者の境遇を考慮すると彼の抱えるコンプレックスのようなものがゆったりと伝わってくる。作者自身は夭逝していて、さらに調べてみると奥様もその数年後に亡くなっている。30歳を目前にした私にとって、20代の内にこの世から去りつつもしっかりと名を遺した彼らは尊敬に値する。
2019/10/11
じゃくお
『雲は天才である』 物語は区分すると二つに分かれ、我が強くて自由に振舞おうとする主人公と彼が勤める学校の校長との言い争いで構成された前半部分と、突然学校へやって来た乞食の男の身の上話で構成された後半部分とに分けられる。 前半部分を読めばまるで『坊ちゃん』のように自由児対堅物の劇を主人公の強い主観的観測を交えて描いているハチャメチャな話のように思える。 しかし後半部分を読むと乞食の男の大変な生き方を熱く、かつ涙を交えて描いている。 コメントへ長々と続きます。
2018/05/20
ばおめい
●石川啄木は天才だ。自然や女性の心理描写に舌を巻く。短歌も好きだが個人的には散文の方が好み。26歳で亡くなったなんて○活動写真で見る舞踏の歩調のように通い越されたり、推い越したり、だんだん近づいて来て、今にもわが身を洗うかと思えば、牛の背に似た碧の小山の頂が、ツイと一列の皺を作ッて、真白の雪の舌が出る。出たかと見ると、その舌がザザーッという響きとともに崩れ出して、磯を目がけてすさまじく、白銀の歯車をまいて押し寄せる。すわやと思うつかのに、逃げ足立てる暇もなく、敵は見ン事さっと退く。(漂泊)
2019/07/26
いちⅡ
図書館。未完の鳥影にしろ、力強くて血潮を感じます。
2018/07/19
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