群像短篇名作選 1946~1969 (講談社文芸文庫 くK 1)
群像短篇名作選 1946~1969 (講談社文芸文庫 くK 1) / 感想・レビュー
踊る猫
どの作品も甲乙つけ難い。流石に『群像』が生んだ作品群だけあって、興味深く読むことが出来た。個人的な好みを交えて言えば、一番面白かったのは島尾敏雄。これは『死の棘』を読まなくてはと思った次第である。三島由紀夫も食わず嫌いだったのだけれど、この一冊で魅力を発見出来たと思う。安岡章太郎「悪い仲間」も面白く、「戦後文学」の魅力に触れることが出来た。「戦後」の、戦災の傷跡が生々しく残る中で書かれた言葉たちは、今なお読むに耐え得る強度を孕んでいるように思われる。なかなか評価されない「第三の新人」の凄味があると思われた
2019/07/16
かわうそ
書かれた時代もあって戦争の影響の色濃いものも多いけれど、発表後50年以上が経過しても特に古い作品を読んでいる印象がないのはさすがに傑作揃いといったところ。特によかったのは原民喜「鎮魂歌」、円地文子「家のいのち」、倉橋由美子「囚人」あたり。
2018/05/20
メタボン
☆☆☆☆ ひたすら美しい文章と岬でのかくれんぼの結末「岬にての物語・三島由紀夫」リフレインが痛ましい「鎮魂歌・原民喜」フィリピンでの捕虜体験の一シーン「ユーアーヘヴィ・大岡昇平」意外なファミリー小説「プールサイド小景・庄野潤三」安吾の白痴にも通じる空襲描写とラストが衝撃的な「焔の中・吉行淳之介」精神を病む妻の詰問が激しい「離脱・島尾敏雄」ありえないグロテスクな刑罰の設定に 全編中一番衝撃を受けた「囚人・倉橋由美子」車に轢かれた馬の祟りがまるで女に乗り移ったような「妖術的過去・深沢七郎」(続く)
2018/11/30
くさてる
錚々たる顔ぶれの作家による、これまた名作のアンソロジーなので、既読の物も多かった。既読では、やはり原民喜「鎮魂歌」が圧倒的。読んでいて許してくださいと言いたくなるような言葉の力。初読では、庄野潤三「プールサイド小景」の良さにめまいがした。なんだこれ。時代を感じるものもありますが、同時に、昭和の空気が閉じ込められたような傑作がたくさん読めます。
2020/04/15
Shimaneko
自分が生まれる以前に書かれた短編が殆どで、おおむね興味深く読了。三島由紀夫や倉橋由美子、河野多恵子あたりは流石に色褪せないというか、今読んでも違和感ないし、森茉莉のぶっとび具合も凄い。いつか読みたいと思っていた『プールサイド小景』がこんな話だったとは。タイトルの語感から、長年、片岡義男みたいなレトロモダンで小洒落れた掌編だと勝手に思い込んでたよ。たまには昔の小説も読んでみるもんだな。
2018/05/13
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