東北学 忘れられた東北 (講談社学術文庫 1932)
東北学 忘れられた東北 (講談社学術文庫 1932) / 感想・レビュー
おMP夫人
私も一応、宮城の生まれです。過ごした時間はわずかですが間違いなく、東北人です。歴史上、東北という土地がこの国の中心になった時代はありません。これはなにも東北に限った事ではないですが、それでも東北は古代は蝦夷・毛人と呼ばれ蛮族扱い、幕末には賊として討たれ、以降も現在に至るまで「中央」にいいように扱われている。「中央」の持つイメージを東北に押し付けられている。そんな思いをうっすらと持っているので、内側から東北を見つめ、柳田國男をはじめとして作られた東北観に疑問を呈するこの本は私の中に流れる血が騒ぎ出しました。
2013/02/28
かやは
弥生時代の二千年のみを日本の文化とみなすのではなく、縄文時代の一万年の豊かな文化を見つめ直す。その鍵は東北にあるという。著者の考えをみると、柳田や芭蕉の東北への憧憬は外国人が日本に抱くそれに似ているんだなと思う。都市の人である自分たちの優位性をもって成り立つ価値。観光地を楽しむような感覚。米以外の穀物が雑穀という蔑称でひとくくりにされているという指摘にははっとした。課題はたくさん投げかけられるものの、著者自身まだそれについて述べることが出来ていないので、実際に得られる知識は少ないのが残念。
2014/07/24
HANA
東北のそこかしこにある伝説や習俗を手掛かりに、いわゆる「柳田民俗学」や「芭蕉的なもの」に異を唱えている。僕のような西日本出身者にはやはり東北とはロマンという色眼鏡を掛けてでしか見えないものであるが。発表媒体の関係からか半分紀行文のような体裁をとっているが、単に各地の風習を紹介するのではなくその奥にある人々の営みを通じて古層に迫ろうという態度は非常に交換が持てる。
2011/10/10
おせきはん
アイヌを含む他地域の人々との交流が生みだしてきた、縄文時代から続く狩猟・採集文化、稲作文化、坂上田村麻呂との戦いの歴史の反映された文化など、東北で受け継がれてきた多様な文化の一端に触れ、東北学の奥の深さを垣間見ることができました。
2017/05/23
塩崎ツトム
松尾芭蕉が黙殺し、柳田國男が抹殺した、いくつもの文化圏が重ね塗りされた本当の東北(の、ほんの片鱗)を、著者の丹念なフィールドワークがほんのりと浮かび上がらせます。ノスタルジーでは、視界が濁るものらしいです。
2013/05/28
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