ナポレオン フーシェ タレーラン 情念戦争1789―1815 (講談社学術文庫 1959)
ナポレオン フーシェ タレーラン 情念戦争1789―1815 (講談社学術文庫 1959) / 感想・レビュー
夜間飛行
哲学者フーリエの幸福論をベースにするが、三人とも余りに怪物すぎて初め戸惑った。僧侶の仮面を被ってひらりひらりと変節に生きる快楽主義者タレーラン。常に目立つ事を避ける冷酷な陰謀家フーシェ。周囲を巨大な熱狂に巻き込み皇帝に登りつめていくナポレオン。本書は彼らの活躍だけでなく、セックスから悪事や自己欺瞞に至るまで人間性を露出させながら、その情念を時代に屹立させる。三者三様の幸福を求め、時に敵対し時に利用し合う虚々実々の駆け引きから目が離せない。実生活では近づきたくない面々だが、情念だけ取り出せば幸福論たりうる。
2019/12/12
ばんだねいっぺい
表題のとおり、ナポレオン、フーシェ、タレーランの3on3のデッドヒートが繰り広げられていて、抜きつ抜かれつ最後まで目を離すことができない。結局のところ、どの立ち位置でも、安穏とはできないようだ。
2023/10/02
A.T
フランス革命〜恐怖政治〜ワーテルローの会戦の1789〜1815年をキーパーソン3名を中心に解説。マルクスにユートピアの概念を与えた19世紀フランスの思想家シャルル・フーリエによる人間解放13の情念になぞらえ、「ナポレオン=熱狂の情念」「警察大臣フーシェ=陰謀情念」「外務大臣タレーラン=移り気情念」の思い切りパッションを追求できた時代が混沌の大革命以後だという。3名が噛み合ってあの時代が到来したといえば、明治維新の3傑西郷隆盛・大久保利通・木戸孝允にも通じる、大物のドラマだなぁ。面白い、わかりやすい視点。
2022/12/30
sibasiba
表題の3名を主軸に激動期を縦横に描写した快作。読み物として非常に面白いのだがバランスが悪く、キーワードとして強調したいのか情念という単語が濫用されて鬱陶しい。にしても誰々の愛人で同時に誰々の愛人なのが普通でさらりと姪を愛人とかフランス人は愛に生きてるなと嘆息。大昔に読んだ藤川桂介の『幻想皇帝』の主人公のモデルってフーシェなんだなって唐突に思い出す。ロベスピエールの妹とのエピソードや醜い女を妻としてとか。
2015/12/24
H2A
鹿島氏の好きそうな『情念』というキーターム。それが『陰謀』『浮気』『熱狂』と分類されて鬱陶しいほど繰り返されるのでちょっと辟易とする。もちろんフランス第一帝政の政治劇読み物としては大変面白い。著者はナポレオンに対してフーシェ、タレーランが最終的に勝利した、という見解のようだがどうだろうか。それに本書ではナポレオンが暗殺されたのが定説のように書かれている。そんなテレビ番組もあったが本当だろうか。
2012/12/15
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