KADOKAWA Group

Facebook X(旧Twitter) LINE はてブ Instagram Pinterest

天災と国防 (講談社学術文庫 2057)

天災と国防 (講談社学術文庫 2057)

天災と国防 (講談社学術文庫 2057)

作家
寺田寅彦
出版社
講談社
発売日
2011-06-10
ISBN
9784062920575
amazonで購入する Kindle版を購入する

天災と国防 (講談社学術文庫 2057) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

rico

起こり得る最悪の組み合せがいつ起こらないとも限らない→「想定外」って言葉、この10年間どれだけ聞いた?文明が発達するほど損害が大きくなる→昔は停電しても井戸や薪や蝋燭があれば何とかなったけど、今は全てのインフラが止まる・・・。思わず、書かれた時期を確認する。1920年~30年代、1世紀近く前。今は常識となっている科学的知見が専門家にも知られていない、そんな時代の論考ではあるけれど、今なお克服できていない課題を突き付ける。「天災」が多いのはこの国の宿命。「国防」として対峙せよという主張に、肯くしかない。

2021/09/26

姉勤

明治を代表する科学者にして随筆家、寺田寅彦の表題を含めた数編のエッセイ。関東大震災や函館の大火、東北の津波、浅間山の噴火など、当時起こった災害を科学者の目で考察、提案する。新聞報道を、情緒を煽るためで科学的検証に相応しくない、当事者を責めて、溜飲を下げるだけでいいのかなど、現代に通じる、そして日本人のカルマに辟易しつつ。抗う術ない大災害を0にするのではなく、智慧を持って50に、復興の時間を半分にできるように。 教訓としての防災の意識が、他国より厳しい建築基準法の整備や、防災訓練に活きていることは有難く。

2018/04/27

Tonex

災害に関する文章のアンソロジー。「天災と国防」「火事教育」「災難雑考」「地震雑感」「静岡地震被害見学記」「小爆発二件」「震災日記より」「函館の大火について」「流言蜚語」「神話と地球物理学」「津浪と人間」「厄年と etc.」の全12編収録。▼青空文庫で数編拾い読み。寺田寅彦なんて古くてつまらないと思っていたが、読んでみると今でも十分通じるようなことを書いている。文章もわかりやすくて読みやすい。

2016/03/11

佳音

汗顔の至りというのはこの事か。昭和九年に「いつかは回って来るのが自然の鉄則であると覚悟を定めて(中略)充分の用意をしておかなければならないということは実に明白すぎるほど明白」であると、寺田は警鐘をならした。本書を読むと、我々がそれぞれの立場で災害において用心に怠りはなかったかと猛省を促される。前途ある、大学生や中高生に読んでほしい。昭和前期の議論が、平成においても新鮮である事に驚きを禁じ得ない。昭和以前の「苦い経験がむだになるようなことは万に一つもあるまいと思うが」とのくだりは、首をうなだれるほかはない。

2012/08/13

まると

90年以上前に書かれたものなのに、今にも通じる大切なことが書かれていた。表題作では、自然淘汰に耐えた村落は災害の被害が少なく、時の試練を経ない建物が倒壊したのは、文明の力を買いかぶって自然を侮った結果ではないかと戒めている。災害に備えて科学的常備軍を置くべきだとする提言は、災害救助も役割とする21世紀の自衛隊の姿に示唆を与える。科学者なのに科学で全てを語らず、柔軟に事象を見つめる姿勢が好もしい。「失敗学」の畑村洋太郎先生による長めの解説がわかりやすく、原発に対する確かな視点をもらえたのが一番の収穫でした。

2024/11/10

感想・レビューをもっと見る