寺山修司全歌集 (講談社学術文庫 2070)
寺山修司全歌集 (講談社学術文庫 2070) / 感想・レビュー
kaizen@名古屋de朝活読書会
一つかみほど苜蓿 (うまごやし)うつる水青年の胸は縦に拭くべし #短歌 智恵のみがもたらせる詩を書きためて暖かきかな林檎の空箱 #返歌 アルファルファ紫苜蓿水洗い老年の胸は丸く拭くべし智恵ばかり短歌書きため蜜柑箱計画者(programmer)の一日を出す 以前、栞で仙波龍英が「なんと無節操なやつだろう」「思ったよりましだな」「実は天才だったと認識を改めた」。自分ではやや逆。演劇の神様と仰いでいた。短歌を詠んでいたことを知り、読まずにいた。自分が歌集を出す段になり、短歌でも乗り越えられない壁だと知る。
2016/09/14
KEI
正直に言って、青春期の歌は読みやすいが、それ以降は難解だった。 上句と下句ので繋がりが理解できず文字が頭の中を素通りしていた。私にはまだ理解が足りないのだろう。ただ、寺山修司は短歌だけをとっても奇才だと思う。穂村弘氏の解説が参考になった。分かりやすい歌では【海を知らぬ少女の前に麦藁帽子のわれは両手をひろげていたり】【マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや】【君が歌うクロッカスの歌も新しき家具の一つに数えんとする】難しい歌も理解できる様になりたい。
2021/01/13
HANA
寺山修司というと、なんとなく血と土俗、情念というものを想像していたのだが、この歌集を読んで驚いた。「田園に死す」こそ全編暗い土俗を歌っているものの、それ以外はそのようなものは一切無くどれも短歌というものに対する認識を改されされるようなものばかり。特に「初期歌篇」の青春の痛みが響いてくるような歌の数々は凄い。でも個人的にはやはり「田園に死す」のひたすら不穏な数々の歌が一番好き。特に二つの長歌。
2012/11/10
おさむ
妻曰く「短歌の尾崎豊」。青春期特有の衝動や残酷、苦悩といった題材が多いので、いつの時代も若者に支持されるんでしょうね。「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」等、どこかで読んだ歌も多く、改めて寺山の影響力の大きさを実感しました。
2015/06/10
ぷるいち
歌の中から自分を消すことで、普遍的で、かつ個別の体験を見出したい、ということをこの人は書いているけれど、無私と行かないまでも、その視点は透徹していて一種の客観性を持っている。(この人のほどの才能だと、どうしても歌へ自分が現れる、というのも分かるような)その無私への志向は、口承文学と同じ方面に顔を向けているのは言うまでもない。さらに、この人は近代の人であって、個別的な「魂」という語を知っていて、だからこそ口承文学に近代的な手続きを持ち込み、「魂のある鬼」などのモチーフを作ったのだろう。激烈な歌集だった。
2016/04/27
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