民話の世界 (講談社学術文庫 2251)
民話の世界 (講談社学術文庫 2251) / 感想・レビュー
テツ
各地を訪れ、その土地に伝わる民話、昔話を採集し伝えてきた松谷みよ子さん。今この時代にまで生き延びてくれた物語ならばデジタルの大海にしっかりと刻み込まれ、人間が存在している限りはこの先も消滅することなく語り継がれていくのだろうけれど、松谷さんがそうしたお話を集め始めた昭和の時代には既に人々の記憶から消えかけているものも多かったそうな。数々のお話の中身やそれに纏わる諸々について楽しく読み進めながら、既に絶滅してしまった誰も知らない昔話って世界中にどれだけの数があるんだろうなと、勿体無いなあと感じた。
2022/02/07
Bo-he-mian
松谷みよ子さんは、人形劇団の仲間と共に地方の古老から民話を採集し紹介し続けた方でもあった。本書には、教訓めいた物語に改変されてしまう前の、ゴツゴツの原石のようなものがたりが収められている。「鬼退治」=軍国主義思想鼓吹のチャンピオンだった桃太郎。そうなってしまう以前の「野放図で土の匂い」がして「決して良い子ではない」姿や、シンデレラそっくりの「米ん福、糠ん福」、授業参観の時に、児童と親の間で熱い議論が巻き起こるという神様の戦い「赤神と黒神」など、知っているつもりで知らなかった、豊饒な民話のタイムカプセルだ。
2018/01/31
おはなし会 芽ぶっく
日本の民話=松谷みよ子さんのイメージが強く、多くの再話をされています。松谷さんの再話が無ければ消えていった民話のなんと多いことか。『第一部 民話との出会い――山を越えて』民話との出会い / 狐の地図 / 祖先という言葉 / 水との闘い / 食っちゃあ寝の小太郎のこと / 信州が昔、海であったこと / なぜ民話というのか / 「小泉小太郎」から「龍の子太郎」へ 『第二部 民話の魅力』象徴的に語ることについて / 貧乏神のこと / ある夫婦愛について――爺と婆の / 赤神と黒神 →
2022/04/01
SKH
民話入門。筆者は民話に魅了され、民話の採録、再話に長年携わり、フィールドワークや自分の半生の回想を交えながら、民話の世界を解説。
2014/10/08
色々甚平
日本の民話について。特に貧乏神の話が良かった。貧乏神という神と住んでいる夫婦に神からあっさり話してきて、福の神が来るので幸せな家から追い出されるそんなの嫌だと泣きはらすのである。夫婦も、なら福の神を追い払ってずっといればいいじゃないと応援する。そして、追い払った際に落としていった小槌により貧乏神が福の神となる。神が特定の人と居たいと泣いたり、福の神の力が固有のものでなく道具の小槌があれば良かっただけというのも良い。嫌われ者の貧乏神も温かみに触れ、目的は夫婦と共にいることだが過程で福の神となれた。
2018/05/28
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