差別感情の哲学 (講談社学術文庫 2282)
差別感情の哲学 (講談社学術文庫 2282) / 感想・レビュー
佐島楓
人間である以上、差別感情からは逃れられない。それは、一般的に被差別者とされている人々のなかにもある感情である。この問題に直面して私ができることは、自分の内面を相対化して、突き詰めて考えてみることだけだろう。著者も、自身の差別意識を自覚し、苦しんだ末の著作ということは伝わってきた。全面的に肯定することはできない文言も端々にあったものの。
2019/08/04
ちさと
冒頭の「差別をしてはならないという社会的コンセンサスvs差別感情を抱いてるという内的現実のズレに、人は悩む」というこの文章、あってるのかね。社会規範として差別したらいけないということと、自分が個人的に差別意識があるというGAPに悩む人って、多いのだろうか。好き嫌いはそれぞれあって、嫌いなのは自分の個人的な問題で、他人が自分と同じ嗜好ではないということはわかっているはず。それと同じで、社会規範と個人的感情にGAPがあっても、そこで悩む人っていないと思うけどな。
2021/01/01
田氏
「問題は悪意またはそれを持つ者のせいでおこるのだから、そいつを封じ込めるか切り取るかすれば解決する」だなんて、そんな安易に考えるのは問題に失礼だ。問題に謝れ!イエッサー!コップンカー!(ありがとう) 誤ったところで本題に入る。本書が示すことのひとつが、われわれが「よいこと」を目指すはたらきこそが、実は差別の源流にあるということだ。思うに、近年はそれが特にSNSによって可視化されているのではないだろうか。イズムを掲げた正当性のもとに排斥や抑圧が平然と、かつ無自覚に行われる昨今、一考すべきところかもしれない。
2020/09/02
ゆう。
差別感情がなぜ生まれるのか。著者は、他人に対する否定的感情である不快・嫌悪・軽蔑・恐怖と自分に対する肯定的感情である誇り・自尊心・帰属意識・向上心のいずれも、差別する感情と結びついており、人は人を差別するものという前提に立っているように思えました。ただなぜ差別感情が芽生えるのかを考えたとき、その物質的基盤と感情との関係がよく見えなかったように思います。基本的には観念論的哲学の世界観ではありましたが、差別する自分にむき合い闘い続けることの重要性を述べていることは大切な視点だと思いました。
2016/08/18
ホシ
「差別」とはいかなる人間的事態であるのか?不快・嫌悪・軽蔑・恐怖といった感情のみならず自身への肯定的感情(誇り・自尊心・帰属意識・向上心)も差別の根源であり、何よりも、そうした「ありふれた」感情に向き合わず、高邁な精神をもって己を見つめることの停止が問題なのであると著者は説きます。昔の高僧は「心は蛇蝎のごとくなり」と言って、己の心に巣食う悪を見つめましたが、それに通じるものを感じました。差別をこの世から撲滅するためには「私は差別をしうる人間である」という自覚を各自が持つ所からなのだと思います。
2019/12/22
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