精霊の王 (講談社学術文庫 2478)
精霊の王 (講談社学術文庫 2478) / 感想・レビュー
姉勤
日本に神道や大陸由来の神仏が招来される以前の縄文以来の精霊は、今も神社の片隅に祀られている。その霊妙な働きや力は、古代以降、芸能や技芸の民に奉られ、それを享受する日本人の精神に受け継がれてきた。先人のフィールドワークや発見された古文書を牽き、言語化すると嘘になりそうな感応を想起させる。いわゆる「神ってる」舞台やパフォーマンスを体験して居る時を。巻末に本書でも多く引用された、能の名人で知られる金春禅竹の「明宿集」の現代訳を載せる。
2024/06/17
tama
図書館本 摩多羅神とは?シリーズ。この著者が一番イヤラシイ。「絶対な自分」が好きなのかな。マハーカーラとくっつけたのは「破壊・創造神」という属性ですか。宿神はスクって言ってて底と書いてるので地の下でもいいの?地の底にいる神?遺体は地に埋めるが?姉姫神をシキジと読み宿神とするなら矢奈比売もそうか?シキジって名前の土地が近くにある。大体ユーラシアといいながらブリテン島辺りしか話題にせず、東アジアの呪い師、アイヌの呪い師という一番近いカミ使いは放置?近くのオクナイ神楽の詞に「しゃくじ」の語見つけた。
2021/04/07
ひつじ
感動した。何も言うまい……今の私がちょうど欲しかったものがあったので満足です。
2021/06/26
ますりん
宿神や石神、佐久神、守宮神等々と表記されるシャグジという神を巡る一大叙事詩。夢みる中沢節はこの本も満開ですが、論点のパースの広さがハンパない。柳田国男「石神問答」折口信夫「翁の発生」からの、金春禅竹「明宿集」と秦河勝伝説を軸に、胞衣をかぶった子供とうつろ舟、天台宗玄旨帰命壇と本覚論、彼方と此方を行き来する翁と、シャグジを祀る猿楽を含めたテクノクラートたち、住吉神社の神々、蛙の背から人の顔が現れた縄文土器まで。個人的にはシャグジに対する信仰の在り方の東日本と西日本での違いのくだりはすばらしく腹落ち。
2021/10/23
ひろ
能に出てくる「翁」は古来天皇や西洋の王がその主権・力の源泉ないし根拠とした「宿神」「コーラ」と同一の存在であり、それは世俗の王の出現によって現実世界から退き、被差別者などの虐げられた者の中にしか今や居なくなったが、この“王の中の王”にこそ未来の主権のあり方を表す可能性がある、という、ぶっ飛んだ、ロックなことが書かれている。神秘的な何かの神託が権力の根拠、というのはまあわかる。しかし未来の主権のあり方もまたその“王の中の王”に見いだせるかもしれない、というのは、一体どういうことなのか、私には全然わからない。
2024/07/02
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