ハードラック (講談社文庫 や 61-6)
ハードラック (講談社文庫 や 61-6) / 感想・レビュー
ミカママ
キャッチーなタイトルと装丁から、まったく別の内容を想像しつつ手に取った、ひさびさの薬丸作品。主人公の仁が堕ちていくさまは、読んでいて胸が痛くなったほど。こういうプロットにはありがちな、ご都合主義といくつかの不自然さはあるものの、読みやすく一気読みでした。
2016/07/23
こーた
学もなければ、世間知もない。登場人物の悉くが(刑事も含めて)みな愚かしくて腹立たしい。だがその苛立ちは、もしわたしも何かのはずみでとんでもない不運(ハードラック)に見舞われたら、ひょっとすると似たような状況に陥ってしまうかもしれない、という愚かしさゆえである。へんなプライドが邪魔をする。求めれば周囲は手をさしのべてくれるのに、助けてのひと言がいえなくて、状況はずぶずぶ悪くなっていく。裏社会に生きる森下だけが、冷徹で頭も切れて、格好いい。てか闇の組織とかジンとかウォッカとかコナンくんかよ笑。
2018/05/05
イアン
★★★★★★★☆☆☆冤罪からの逃走劇を描いた薬丸岳の長編。詐欺に遭い全財産を失った仁は、闇サイトで知り合った仲間と強盗を企てる。決行当日、侵入先で何者かに殴られ気を失った仁は、気付けば放火殺人犯となっていた…。誰が仁を嵌めたのか。遺体で見つかった3人目の正体とは。真犯人の意外性に固執するあまり行動原理に一貫性を欠く場面も見受けられるが、捕まれば死刑という状況下で黒幕を追う展開が実にスリリングだ。人を傷つけずとも押込み強盗は重罪である。安易にハッピーエンドとしなかった点に罪と向き合う著者の厳しさを垣間見た。
2024/10/23
hit4papa
強盗殺人の罪を着せられた青年が、真相を究明するために奔走するサスペンスです。少年犯罪、被害者家族・加害家族といった、答えの出し難いテーマを得意(?)としている著者ですが、本作品は分かり易い展開で、拍子抜けをしてしまいました。ミスリードを試みてはいるものの、所々、無理がありますから、興を削がれます。伏線は確かに張られているのですが、すんなりとは腑に落ちません。誰も信じてくれない系のサスペンスの割に、ハラハラが少ないのも面白味を欠いている一因です。締めくくりでは、どんより感が増量してしまいましたよ。どよーん。
2020/04/07
じゃじゃまる
闇社会がもたらす本当の悲劇、そこに踏み込まなければならなかった格差社会の犠牲者の是非を問う、というところがこの話の本質か。。派遣切りにあい、職も住居もなくした男=ジン、闇社会に騙され借金漬けになった男=バーボン、そして闇社会によって肉親を失った男=●●、この3人が悲劇の主人公。しかし真犯人の正義はやっぱり正義じゃない、気持ちはわかるが、巻き添えをくらった方は本当の悲劇だよ。でも正解はわからんな、格差社会は今も現実、明日は我が身、か。闇の森下がやけにかっこよく描かれていたのはちょっと不愉快、いつか制裁を!
2016/05/04
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