国を蹴った男 (講談社文庫 い 124-7)
国を蹴った男 (講談社文庫 い 124-7) / 感想・レビュー
三代目 びあだいまおう
とても好きです。戦国時代の短編集で、有名な武将の物語ではなく、歴史にあまり名前の出てこない人物達の非運を描いています。時代の価値観、権謀術数に翻弄されながら死んでいった者達の悲哀。時に痛快で、時にもの悲しい心の襞を、史実に忠実か否かなど全く気にならない程面白く描かれています。それぞれが「生きている」という息吹、その辺りが上手いですね。特に響き、衝撃的に印象が残ったのは、かの直江兼続に対する嫌悪感と、前田利家の妻「まつ」に対する女の怖さです!6編全てで『小説家の類まれなる創作センス』を堪能できる秀作‼️🙇
2020/07/16
しんごろ
短編集ですが、どの話も素晴らしい。それぞれの主人公は、決して教科書に載るような存在ではないけれど、義に生きる者、信念を貫く者、それぞれが結果的に、敗れざる者達ではあるが、その生き様はどの男達も、誇り高い“漢”だった。表題作はもちろん、全てがよかったが、とくに目を見張ったのは『天に唾して』の山上宗二の話。信念を貫き通した生き様に、心を躍らされました。
2020/01/06
yoshida
伊東潤さんは初読みの作家さんです。比較的マイナーな人物を主人公にした短編6編を集録。私は歴史物が好きで楽しく読めました。「牢人大将」では那波無理之介を主人公に、武田家牢人衆の活躍と長篠合戦での滅亡を描く。まず、那波無理之介を主人公にした着眼点に痺れますね。無理之介はどこかの合戦で慎重策をとったら「道理之介と名を変えよ」と朋輩に云われた事を思い出し、印象深かったです。山上宗二や佐久間盛政など、敗者の側から反骨心を見せる姿が清々しかった。小早川秀秋が暗愚というより少才子として描かれており斬新。他作も読みたい。
2016/11/24
遥かなる想い
戦国時代の著名な武将の陰で生きた者たちの短編集である。武田家牢人衆、長束正家、直江兼続、佐久間盛政、茶人 山上宗二、今川氏真… 個々のエピソードが新鮮で 面白い。 特に表題作の今川氏真の蹴鞠と歌人としての人生は 秀逸で、今川家という 大大名でありながら、文化人として 生きたかった別の側面が 爽快に描かれている。
2022/02/10
Rin
初読み作家さんだったけれど、とても楽しめた。もともと歴史ものをあまり読まない私でも、登場人物たちにぐんぐんと引き寄せられる。実在した人たち、彼らの生きた時代は今とは価値観も異なる部分があって。こうありたい、という自分のままに生きることができた人から。そうできなかった人、思うがまま生きるための決断。生きるということと、死を選ぶこと。その決断に至るまでの物語に引き寄せられた。特に牢人であり続けた「牢人大将」算術に優れた男と、彼を使う男「戦は算術に候」鞠に魅了された男を描く「国を蹴った男」がよかったです。
2017/12/28
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