恋歌 (講談社文庫 あ 119-5)
恋歌 (講談社文庫 あ 119-5) / 感想・レビュー
三代目 びあだいまおう
とても素晴らしい!尋常じゃない吸引力に惹き込まれる。幕末から明治、女性が生き辛い時代に一世風靡した歌人中島歌子(樋口一葉の師)の生涯を、残した手記を紐解き描く。構成が抜群。前半の無邪気でおきゃんな女の子、恋をし恋を叶え、やがて牢獄に入れられこの世の地獄を生き抜く女。水戸藩の内乱、身内同士の愚かな大喧嘩、忠と不忠が糸車のように入れ替わり、巻き込まれ翻弄される女の命はこんなに軽いのか?何たる不幸と不条理!後半の牢内歌留多と、牢の去り際の決死の叫びが慟哭をもたらす!恋の最高峰と見事な終止符。天晴れ直木賞‼️🙇
2020/09/03
しんごろ
時は幕末から明治にかけて水戸藩の争いに巻き込まれた歌人の人生!天国、地獄を味わい生き抜く精神の強さに感銘しました!ちょっと読みづらいとこもありましたが、物語は引きこまれるパワーがあります(^_^)時代物はいいですねえ(^_^)再読時のBGMはコブクロがいいかも(^_^)v
2015/11/17
yoshida
樋口一葉の師である歌人の中島歌子。彼女の手記を通じて、幕末の水戸藩の内紛と歌子の生涯が描かれる。幕末はアメリカの砲艦外交で国内体制がまさに揺れた。徳川幕府から明治新政府へと変わる訳だが、多くの血が流れた。時流の波、権謀術数に翻弄される人々。ともに国を思いながらも、反目しあい血で血を洗った水戸藩の天狗党と諸生党の何と哀しいことか。歴史は勝った者が造る。しかし、負けた者にも大義がある。恩讐の彼方に見せた中島歌子の遺言に、人の持つ赦しの気持ちの仄かな灯りを感じた。そして歌子の以徳への愛情の一途さに心打たれた。
2018/01/08
うさ丸
初読み 朝井まかて。 2014年第150回直木賞受賞作品。 物語は樋口一葉の師、中島歌子の手記を門下生が見つけ、読み進めていく形をとっている。 終盤は畳み掛けてくるあまりの凄絶な描写に何度も本を閉じ、込み上げてくる憤りに堪えながら読むしかない。 舞台となる幕末の水戸は正直、あまり詳しくはない。 だが、老若男女が内乱に巻き込まれた時代に中島歌子が愛した男が確かに存在し、散っていったことを忘れられない否、忘れてはならない作品であった。
2018/06/04
reo
落語に崇徳院という噺がある。高津神社に参詣に来たご大家の若旦那と、良えしのいとはん。互いに一目惚れやが、昔の恋は言葉もかけられへん。いとはんが忘れていった茶帛紗を、若旦那がこれあんたのと違いますかといって手渡す。いとはんにっこり笑ってさらさらと「瀬を早み岩にせかるる滝川の」と崇徳院の上の句を書く。さぁそこから互いに恋煩いですな。この物語も崇徳院の歌から始まる。落語とは違いしっとりとした歴史小説。桜田門外の変では攘夷派として活躍した水戸藩士がその後表舞台からなぜ消えていったのかがよくわかります。直木賞納得。
2016/11/19
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