存在しない小説 (講談社文庫 い 65-3)
存在しない小説 (講談社文庫 い 65-3) / 感想・レビュー
miku
世界各地からの短編集。存在しない定義に不思議さを感じながら読破。なんだろう、このよく分からない世界観。短編達がどことなく緩くつながって、一冊の本として確固たる存在感を放つ、どう表現していいのかわからない。嫌いじゃないけど、これは好き嫌いはっきりわかれるだろうな。
2016/02/18
niisun
本作品では“編者”ということになっている“いとうせいこう”氏の実験的小説。その実験が成功したのかどうか、正直私にはまったく解らない、実験がどうのこうのと気にせず読めば、なかなか興味深い作品でした。ラテンアメリカや東南アジア系の匂い立つような世界や世界大戦の陰が色濃い移民の物語など、存在の有無など気にせず楽しめました。ただ、難しく考えなければ“存在しない小説”とは、読者が読ゆみ進む小説のことか。読者の都合で途切れ途切れに進行し、読者其々の勝手な想像が介在する世界は、確かに、唯一無二の存在ではないが...。
2017/09/11
てくてく
「存在しない作家」たちによる「存在しない小説」が成功したのかどうかはわからないが、場所などを異にする作品をそれなりに楽しんだ。特にマレーシアが舞台の短編が爽快だった。
2018/08/10
SAT(M)
世界各国の短編を集めたアンソロジー(という体)。筆者の思考実験から「編まれた」一冊かと。短編の合間の解説で「存在しない小説」論が展開されているのですが、その中で「存在しない小説」はウネウネとその定義を拡大し、ダイナミックな定義に合わせるかのように各短編が差し挟まれている、というような作品と解説の主従の逆転というアラワザをやってのけています。最後に掲載された短編「オン・ザ・ビーチ」。「書かれた者が、書かれた物を読んでいる」というねじれたメタ構造は思考実験好きなロンリ人間にはたまらないです。
2016/08/24
ひやしなむる
「まだこの世には書かれていない小説です。しかし傑作は歴史の中に点々と隠れているのです。私たち存在しない小説の翻訳家はそいつを見つけ出しーーこっちの世界に引きずり出す」(第二回 リマから八時間より)。この部分を読んだとき「あれ、これって幻書(『本にだって雄と雌があります』に出てくる不思議な本)と通じる部分があるのでは?!」と思った。違う本に同じことが書いてあるということは、それが本当にあるということだ、と思ってわくわく。そして、存在しない小説のいろんなパターンが読めます。
2016/10/19
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