愛の夢とか (講談社文庫 か 112-5)
愛の夢とか (講談社文庫 か 112-5) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
「愛の夢」は、よく知られたリストの曲だが、「とか」をつけてしまうところが川上未映子らしいところ。そんなら「とか」って何やのん?と言われても本人も困ってしまうのだろうが、本来完結すべきところで完結せずに、あれこれと思考を巡らせているうちに、どこかに漂着する―それが川上未映子かと。7つの短篇は多かれ少なかれ、何かを喪失する物語でもある。そして、その背後のはるか向こうには3.11の震災が見え隠れもするのだが。巻末「十三月怪談」の最後には、奇妙ながらもほの明るい光が見える。解説もなしという潔さも川上未映子らしい。
2017/06/30
ハッシー
40代女性のどこか人生を諦観した雰囲気が漂う。 静かに孤独感が語られている。物語が急に好転することも、都合よく主人公が助けられることもなく、ただ淡々と日常が過ぎていく。そんな日々のもの悲しさを綴った作品。
2017/01/31
しんごろ
表紙とタイトルに惹かれて衝動買い(^^;)何気ない日常生活をここまでさりげなく物語にするのは驚きですね!後々、どんな話だったか忘れそうだけど…(^_^;)『十三月階段』は印象に残りました(^^)ただ、平仮名が多くてちょっと読みづらかったかな(^_^;)
2016/05/05
ちゃちゃ
自然の脅威を前に、私たちは現実の生が一瞬で崩れ去ってしまう恐怖を経験した。3.11後に発表された短編を含む本作は、生の不安に満ちている。今私たちが生きていることの脆さ、不確かさ。ならば、今ここで感じるものこそが確かな生の感触なのではないか。隣人のピアノの曲が完成したときに交わした口づけの高揚感、「愛の夢とか」。別れた恋人との叶わなかった約束後の淋しさ、「日曜日はどこへ」。生死の境を超えた愛と喪失の哀しみ、「十三月怪談」。言葉にすると瞬時に色あせてしまう感覚や感情を、息苦しいほど鮮やかに切り取った短編集だ。
2019/10/22
しいたけ
「新しい文体の実験につきあわされているのか?!」と驚きつつ読み進めた。長いうえに捏ねくり回され、主語は何だっけと慌てて戻るような文。同じ言葉の繰り返し。予想もつかない「比喩」「例え」。頭を抱えて考え込んでしまうような登場人物の動き。ふわふわした世界に少しずつ、でも確実に忍び込ませている毒。へんてこりんでカラフルな、耽美でほんの少し淫蕩な独特な世界。咀嚼は人それぞれ、そのときどきで如何ようにも変わるだろう。芸術のような作品だった。
2016/05/19
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