新装版 高山右近 (講談社文庫 か 5-10)
新装版 高山右近 (講談社文庫 か 5-10) / 感想・レビュー
夜間飛行
秀吉がフスタ船の底に日本人を見つけた際、コエリョは甘く見たが、右近は日本での禁教が始まる事を危惧していた。歴史は右近の予想通りになる。秀吉以上に厳しい秀忠の禁教令の下、62才の右近は妻子や孫と共に罪人として金沢から京に護送される。この時、自らの希望でイエスに倣い(同じく信者の妻や娘も)雪山を徒歩で越えている。次いで長崎に送られた右近は進んで癩の治療に携わる。長崎では千々石ミゲルの最期が哀しかった。そして凄絶なマニラ渡航。ラテン語聖書を精読した学識の人・右近の胸には、常に十字架上のイエスがあったのだと思う。
2024/07/27
優希
キリシタン大名として有名な高山右近。その晩年の生きた軌跡を歴史的な側面ではなく、信仰者として描いていました。禁教令の中で金沢に身を隠すようにして暮らしていた右近。深い黙想と祈りに浸るその日々は、全てを捨ててまで信仰の道を歩む姿そのものに見えました。聖痕を受けるほどの深い信仰。「清廉にして智の人」と刻まれる武将でありながら、その本当のあり方はただ信仰の道を歩んだあり方でした。国外追放により、マニラにて最期を迎えますが、その最期までキリストの本髄を生きた揺るぎない魂を感じさせられます。
2016/09/17
金吾
なぜ信仰を続けるのか、人はどのようにして生きるのかを考えさせられる一冊です。高山右近の晩年を書いていますが、右近は幸せであったのだろうと思えるラストが良かったです。
2022/07/30
kthyk
歴史小説は覇権の大河ではなく、時代の狭間の時空が詳細に書かれたものがボクの好み。既に読みメしたが、辻さんのユリアヌスや若桑さんのクワトロ・ラガッテイは秀逸だ。スペイン・ポルトガルからの人々や中国・韓国と深く交流・交易する右近、行長、如安はやがて秀吉の朝鮮征伐、伴天連追放、家康の禁教令、鎖国令に翻弄される。医者であり、カソリックの洗礼も受けた加賀さんの小説は右近の持つその精神性に重きが置かれている。安土のセミナリオ建設で親しくなった右近と如安、六十を過ぎ金沢の右近は如安を救うが、共にマニラに流れ没していく。
2023/02/11
noémi
高山右近は、戦国武将の中でも特に好きな人物だ。キリシタン大名で、秀吉に棄教せよと迫られたのだが、大名を辞めて自分の信仰を貫き、自分の領地だった高槻、明石から前田藩に召し抱えられて26年。金沢に赴いたのまでは知っていたが、高岡城を築城したことや、ラテン語、ポルトガル語はペラペラだったこと。マニラに行ってからのあれこれなど、知らなかったことが多かった。最期の右近の述懐が心にしみた。「自分の人生は常に戦いだった。主よ、早く争いのない世界へと向かえてください」と。毅然とした美しい生涯だったと思う。
2019/09/29
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