怪談四代記 八雲のいたずら (講談社文庫 こ 85-1)
怪談四代記 八雲のいたずら (講談社文庫 こ 85-1) / 感想・レビュー
中玉ケビン砂糖
【日本の夏は、やっぱり怪談】『凶事をなす者には七代祟る』などというものの、八雲(はうん)家の場合は「不思議な祝福」が適当なのかもしれない。エッセイではあるものの、曾孫に当たる著者が曾祖父ラフカディオ・ハーンの足跡を辿りながら、来訪地に伝わる伝承や過去に聞いた怪異譚を回想し、さながら「再話文学紀行」とでも形容すべき諸国漫遊の記録。根岸鎮衛『耳袋』は町奉行という身分でありながら風流人・好事家でもあった彼の特殊なケースだし、柳田國男『遠野物語』は語りと採話によって織りなされる稀代の作品だが、
2023/08/27
sin
「信じるものには訪れる」といって怪談だから“霊”という訳ではない。それは“縁”…文中にも表現されているが古来日本人は無宗教なのではなく祖霊を尊ぶという。ハーンの曾孫であられる作者がこれほどまでに不思議な出会いを繰り返すこと、それこそ曽祖父ハーンを忍んでその足跡を辿るその行為から自然と舞い来たったものではないだろうか?現代人はまるで根無し草のように自分たちの依って来たったところを省みることはないが、自分たちのルーツに思い至る時、却って共に生きる人々との縁を実感することが出来るのかも知れない。
2016/08/09
優希
小泉家の4代目が描く怪談と小泉八雲のこと。世界各地をめぐり、日本にたどり着いた八雲。100年の時を経て著者が語る八雲像に惹かれました。特別な家族エッセイと言えますね。
2022/07/28
ホークス
八雲の作品に共通する、薄暗く荒涼としたイメージが好きだ。それは彼が育ったアイルランドの風土と関連するらしい。怖い話に自意識は邪魔である。「怖い」と言う事が信仰的な性質を帯びた心の状態だからであり、この点彼の作品には自意識を寄せ付けない厳しさがある。本書は八雲の曾孫である民俗学者が、学問的な畏敬、祖先への追慕、多文化主義の実践などを絡めて、世界中の所縁の地と人を訪れる紀行文である。四代にわたる不思議な因縁話が読みどころだが、好みは分かれそうだ。自分の名を「昔の私鉄沿線駅前の純喫茶」と言うが、確かに有ったね
2017/04/29
Sakie
ラフカディオ・ハーンを曾祖父に持つ学者の随筆。ハーンはギリシャとアイルランドにルーツがある。どちらも一神教一辺倒ではない国だ。神ではない、人に働きかける見えざる存在への親和性はありそうだ。もちろん日本も。私は彼を故国喪失者として見ている部分がある。ハーンは日本に渡って落ち着き、日本の暮らしを楽しんだ。しかし、明治の松江の人々は紅毛だ鬼だと疎み、盆踊りを観ているところへ砂を投げかけられたと記録が残っている。「日本の面影」にはそんな気配は露ほども見せない。仕方ないとはいえ、切ないことだ。
2023/09/24
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