紫匂う (講談社文庫 は 99-5)
紫匂う (講談社文庫 は 99-5) / 感想・レビュー
じいじ
時代小説の面白さを存分に堪能した。藤沢周平とは違った情感のこもった時代小説で面白かった。平穏な日々を過ごす武士・萩蔵太・澪夫婦に突如訪れた藩内抗争。夫婦の情愛、昔操を捧げた男への未練の情に揺れる恋の行方と、賄賂にまみれた悪家老一派の罠を暴く二つの話がシンクロして、手に汗するワクワク感が堪りません。男性作家・葉室氏が描く、妻から見た昔の男と夫の人物描写が繊細で上手い。澪が思いの丈を語る、大団円が良い。「ひとの妻たる身が恋する相手は夫のほかにない」が印象的だ。何年後かに、もう一度読み直したい力作である。
2017/11/05
Aya Murakami
通院先の途中の雑貨屋で買った古本。 主人公と主人公の幼馴染の母親との関係が怖ーい女関係を凝縮したようで非常に迫力がありました。これって近親憎悪というやつなのでしょうか?お互い不義の愛情を抱きながら自己嫌悪の感情を相手に投影しているように見えて仕方がなかったです。自己嫌悪と近親憎悪を超える方法、それは身近な人をまず信じて温かい気持ちを向ける。それがこの作品のテーマなのかな?と考えて読み終わりました。
2019/01/04
やま
澪と幼馴染の笙平、澪の夫で心極流剣術の逸物といわれる萩蔵太は、黒島藩六万石の政争の渦にに巻き込まれて行く物語と思って読んでいくと。澪は、若き頃に一度だけ契りを結んだ事のある笙平と誠実な夫との間で心が揺れ動く女心を書いた物語でした。国家老黒瀬宮内の不興を買い、罪人として国元黒島へ護送される途中に逃走した元江戸藩邸御側用人の葛西笙平は、若い頃の想いを胸に人妻となった澪と12年ぶりに会って澪への想いが募る。澪は、ただ一度だけ契りをかわした笙平への想いを胸に夫の蔵太に一言の相談もせず笙平を匿う。→
2022/09/12
chantal(シャンタール)
江戸屋敷で側用人をしていた笙平が咎を受け、国許へ護送される最中に逃亡、郡方に勤める蔵太と既に家庭を築いている澪に救いを求めて来た。笙平は澪の幼馴染で、嫁ぐ前に一度だけ契りを交わした相手であり、澪は後先考えず笙平を匿う。なんとも昼ドラのような内容のお話で、あまりの澪の考えなさ加減に笑ってしまう。このお話は蔵太が強く優しい正義のヒーローで、そのカッコ良さを鑑賞するために読むお話かな。まあ、昔の男に頼られて揺らぐ女心も分からぬでもないが。
2020/02/20
優希
静かに女性の心情を描いている作品だと思いました。2人の男性の狭間で揺れ動く澪。一度だけ契りを交わした笙平が現れなければ、夫・蔵太と平穏に暮らせたことでしょう。訳ありとはいえ、笙平を匿う澪と、意外な優しさを見せる蔵太を見ていると武士の妻が持つべき義と交錯する想いが伝わってきます。武士の妻であることとは、武士道とはと問いかけているように感じました。
2020/11/19
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