僕の光輝く世界 (講談社文庫 や 76-1)
僕の光輝く世界 (講談社文庫 や 76-1) / 感想・レビュー
chiru
実際の症例を活かしたミステリー。学校でいじめられてる主人公は、橋から落とされ失明。しばらく失明したことに気付かない訳は『アントン症候群』という脳の自動補正によるもの。病院で知りあう美少女も美人看護師も、無自覚に作成した脳内VR。“見てるもの”の違いが、現実とのズレをうみ、殺人事件に巻き込まれることに。一瞬一瞬の出来事を目に焼き付けることも、積み重ねることもできない人生。それを柔軟に受け入れ、成長していく主人公の姿に『あなたならどう生きる?』と問われたような気分。脳の働きってすごい。★3
2019/11/25
『よ♪』
SF作家の描く連作ミステリ。短篇三つ中篇一つ。アントン症候群を患う少年が主人公。脳の大きな損傷で失明したとき、本人には脳の作り出す鮮明な景色が見えていて、失明に気付かないという実在の症例。この設定が上手く使われ、脳の無意識が見せるイメージによって事件を解決していく。脳障害で併発した多幸感により作中の世界観は終始明るい雰囲気だが、取り扱われるテーマは"いじめ"、"第三者による制裁"、"障害を持つ人への優越感"、"外側にいる野次馬の無責任な発言"など非常に重い。『虚無への供物』のような空気がふっと頭を過った。
2019/06/09
きっしぃ
アントン症候群。視覚を失っているのに、本人は視覚があると証言する…。人間の脳って不思議。そんなアントン症候群の少年が主人公のミステリー。設定を上手くいかしつつ、なかなかにブラックなオチも楽しめました。二話に出てきた親切な女性って絶対詩羽だよね!思いがけず友情出演が嬉しい。今まで読んだ山本作品の中ではメッセージ性は控え目かな。さぁ次はなに読もー!
2018/03/19
ゆんこ姐さん@文豪かぶれなう
ある事故で脳を損傷し、アントン症候群という病にかかった少年。実は失明しているのだが、本人には、本人の頭の中で補正された世界が見えているという。そんな中、少年は美少女と出会う。そして、見えているけれど本当は見えていないという虚構の世界で様々な謎を解き明かしてゆく。アントン症候群になるとかなり楽観的な考えになるという事で、物語に悲壮感はあまり感じないが、軽いミステリから本格ミステリまで盛り込んだ作品。少年がこの先どう生きてゆくのか気になるようなラストだった。
2017/04/15
緋莢
高校でいじめにあっている高根沢光輝。ある日、橋から突き落とされてしまう。一命は取りとめるも視覚を失ってしまい…著者には珍しいミステリ作品。あらすじに“失明”してしまっていたとあるも、最初の方にはそんな風な描写が無く、あれ、おかしいな…?と思っていたら「アントン症候群」である事が判明します。このアントン症候群、実際にあるもので、かなり珍しいものの、実際にある症例のようで、視覚を失っているにも関わらず、本人は視覚があると思っている というもの(続く
2020/12/20
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