短篇五芒星 (講談社文庫 ま 49-11)
短篇五芒星 (講談社文庫 ま 49-11) / 感想・レビュー
眠る山猫屋
様々な迸る感情が滾る。“流産”というイメージが頭から離れなくなった主人公の苦悩。心に湧いてしまった衝動は自分では消せない。他人を傷つけ自身を苛むと解っているのに、他人とは共有できないのに。一番惹かれたのは『あうだうだう』北陸の田舎町に転校してきた主人公、“あうだうだう”という存在がいて、それと戦う人もいると聞くが。主人公の恋の顛末、愚かな恋の果てに“あうだうだう”と遭遇してしまう。悪神とも魔物とも知れぬ描写が尋常で無く恐ろしい。そして彼女を救ってくれた同級生。彼女が救ってくれたのは人生だけじゃなかった。
2022/11/10
あも
美しい馬の地/アユの嫁/四点リレー/バーベル・ザ・バーバリアン/あうだうだう、の五芒星。単行本は発売日に購入、再読もしているが、重ねて文庫を購入。これは現代日本のフォークロアだ。舞城の言葉はいつどこで開いても、頭ではなく心だとか魂といった抽象的な概念でしか言い様のない場所にずんずんと遠慮も無く染み込んでくる。過剰な暴力も性描写も怪異も、その表裏にある生きること、愛することを際立たせるためのガジェットに過ぎない。だからその物語は時に脈絡さえ越えて、ぎゅっと心を掴むのだ。ある種の切実さと真摯さを持って。強く。
2016/09/21
hit4papa
子供の落書きとでも言いましょうか独特の視点で描かれた”らしい”作品集です。流産がひたすら気になり周りを不快にする男「美しい馬の地」、ダンディな鮎(魚ね)の嫁になった女性「アユの嫁」、密室の都市伝説「四点リレー怪談」、悪い箱(!)と戦う女子高生「あうだうだう」。本作品集の中では、バーベルになった男「バーベル・ザ・バーバリアン」のとんでも話ががお気に入りです。著者の作品が初めてなら、ここから入ってはいけないかもしれないね。いつものあふれんばかりの疾走感が欠落しているからか、フツーのわけわからん話ですので。
2018/05/30
hanchyan@だから お早うの朝はくる
さて。マイジョーです。自分、初読はふつーに「煙〜」だったので、未だに「メフィスト賞作家」っていう刷り込みが消えないんだけど(笑)、こんにちではすっかり、老若男女を問わず閾値の低い読み手の(それが低ければ低いほど)フラジャイルな感受性に応え得る作家さんになったような印象で、隔世の感あるなあと(笑)。なるほどメフィストってよりかは群像っぽい短編のうち、3話目を読みながら「(メフィストと群像)どっちから来たかで真っ向から評価分かれそうだな、これは」なんて浅慮も楽しい。マイジョー神はふたつの貌をもつのだなあ。
2021/08/17
kasim
舞城王太郎は才気ある作家だけど、とんがり過ぎて読者の度量を試すような過激な設定も多く、精神的に余裕がない時は手に取るか迷う。この短篇集は比較的穏やか。客観的には冒頭の「美しい馬の地」が優れていると思うが、「アユの嫁」「あうだうだう」が好きだ。若い女の子の一人称の語りがほんとに上手。もよんとした福井弁もいい。姉が突然アユと結婚し、アユは高級スーツを着て感じがよくて物理学科を出ていて、驚く妹に姉が「人の格好してるけど、鮎だよ?魚ってことじゃないけど」と言ったりする世界。「あうだうだう」は長篇で読みたい。
2023/02/13
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