藪医 ふらここ堂 (講談社文庫 あ 119-7)
藪医 ふらここ堂 (講談社文庫 あ 119-7) / 感想・レビュー
のり
小児医の「天野三哲」は籔医との評判。口も悪く面倒臭がり。子の親とも言い争う。「三哲」の娘の「おゆん」は幼なじみの「次郎助」と共に診療を手伝う。三哲は大雑把に見えるが、気配りや見立ては超一流の気配が…姿型にも無頓着で、偉ぶった格好を良しとしない。他の主要人物も個性派揃い。「まかてさん」らしさを存分に味わった。
2019/02/18
ふじさん
江戸下町の小児科医の天野三哲、付いた渾名が「藪のふらここ堂」。いい加減で頼りなく見えて凄腕、粗野に見えて繊細、御公儀奥医師にお招きがあるほどの実力があるが庶民派。まさに、際立ったキャクターのが主人公の存在が、ふらここ堂の人々の日常と騒動の物語を盛り上げる。医療の本質に迫る題材だが、下町の人情、恋愛、武家社会の非情さ等読み応え十分で、とにかく読んでいて楽しい。そんな中味が自然なユーモアとリアリティー溢れる文章で綴られる。実在のモデルがいるとのことだが、山本周五郎の赤ひげを思い出した。
2022/11/21
じいじ
朝井まかての小説は10作目ですが、目下ハズレがありません。今作も面白いです。主人公は江戸下町の開業医・天野三哲、専門は小児です。この三哲先生は「面倒くさい!」が口癖で、名医なのかヤブ医者なのか?判断がしにくいですが、私はこの先生のキャラは好きです。ある日、子供の集団中毒が発症。嘔吐と下痢の子供たちが母親に付き添われて運び込まれてきます。「慌てるでない!」と三哲先生は、母親たちを一喝します。三哲先生に振り回されながら、先生をわきで支える娘や弟子たちの奮闘ぶりがとてもいいです。
2024/04/24
のぶ
とても楽しい小説だった。タイトルのとおり藪医者と囁かれている三哲を中心とした時代小説だが、その実態は藪などというものではなく、患者に対してのケアから薬の知識まで多岐に及んでいて大変な活躍ぶりだった。また単なる医療小説のジャンルに留まらず、三哲を取り巻く人たちの存在が温かく、家族小説でもあり人情ものとしても読めるテンポの良い作品だった。読む前は映画「赤ひげ」の三船敏郎をイメージしていたが、同じく描かれている人情は「赤ひげ」とは性格は違えど優しく面白かった。
2018/01/24
kei302
名医なのか藪医者なのか。正と邪を揺れるブランコのようにゆ~らゆ~ら行き来する、めんどくさがり屋の三哲先生。亀婆や長屋の人たちも個性的で面白かった。面白さだけでなく、締めるところは締める。文庫解説は、自称:不良医者の久坂部羊氏。江戸時代に実在した人物をモデルにしているそうです。
2021/09/07
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