白石城死守 (講談社文庫 や 78-2 山本周五郎コレクション)
白石城死守 (講談社文庫 や 78-2 山本周五郎コレクション) / 感想・レビュー
future4227
私が産まれた7日後に他界された山本周五郎さんの時代短編小説6編。戦争中の殺伐とした空気が日本を覆っている中で、このような情愛に溢れる話が書けることに驚嘆。それぞれの武士の面目、武士の意地、武士の誇りがぶつかり合い、どうしても譲れない一線のせめぎあい。端から見ればくだらなくもあり、 馬鹿げていることでも、武士たちはそこに命を懸けることを厭わない。卑怯と不忠を嫌うこれぞ武士道精神。
2018/08/31
キムチ
筆者作品は網羅して読み切ったと曲解していた。6編の短編が入っている。2時間も要せず逐読でも読める。内容も平易ながら、行間の余情は上質。緑陰のとは言えぬまでも外の炎暑が瞬時跳ぶほど忘我。彦根・紀州・三春・奥州・越後と舞台は処々。「与茂七・」ラストでの号泣場面が泣かせる。我が強く押しの強い青年武士が主役。「矢追‥」では実際の価値判断をする前に「城」の存在に無知蒙昧な人々を描いていて秀。「笠折・」恩賞を褒美にしたらさらに危険を冒すものがという考えに◎私は「菊屋敷」が一番☆幕末の儒学者の女性の子を巡る思いが!
2020/08/06
AICHAN
図書館本。表題作のほか「与茂七の帰藩」「笠折半九郎」「豪傑ばやり」「矢押の樋」「菊屋敷」を収録。端正で美しい日本語が記憶に残る。「菊屋敷」は『日本婦道記』を想わせる名作だった。
2022/01/04
スー
13白石城の話だと思って開いたら短編集で驚きました。戦国時代の武士と女性にまつわる話が半分くらいあり、とてもせつなくて悲しい物語が多かった。思ってた話とは違ったけど心を打たれる良い本でした。
2023/02/05
路地裏のオヤジ
山本周五郎の秀逸な短編集。 笠折半九郎の主君の言葉が最も心に響くいた。「その方の働きは天晴れであった。だが、その働きを賞美したら、今後多くの家臣が防ぎきれぬ火に向かって危険を冒すことになる。角櫓一つ助かるより、その方が無事であることが予にはうれしいのだ。20年側に仕えながら、世間が何と言おうと、予の気持ちを察する気にならぬのか!」 白石城死守で夫の覚悟を察し、死を賭して城を目指した天晴れな妻など、どれも読み応えがあった。
2018/10/06
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