完全版 日本婦道記(上) (講談社文庫 や 78-3 山本周五郎コレクション)
完全版 日本婦道記(上) (講談社文庫 や 78-3 山本周五郎コレクション) / 感想・レビュー
tengen
山本周五郎の直木賞辞退作。 周五郎自らが選んだという11編より抜き版の「小説 日本婦道記」は読んでいましたが、こちらは31編すべてを網羅した完全版。 その上巻。 ☆彡 松の花/梅咲ぬ/箭竹/笄堀/忍緒/襖/春三たび/不断草/障子/阿漕の浦/藪の陰/頬/横笛/郷土/雪しまく峠/髪かざり
2022/01/11
山内正
余程の事があれば相談に来いと父が 安倍家で白無垢姿で 御用で遅れる 使いの声が聞こえる 何か起こったのか 休之助が藪で倒れ医者を 綿帽子を脱ぎ私着換えさせて下さい 常着に 茣蓙に仰向けに寝ていた 全ての人が去り老母が礼を言う 八十金整えて欲しい三日之内にと夫 持参した着物を売り五十金を 残りを実家に願いに行く 揃えた金に済まなかったと夫が 五十日し役を解かれ家禄は半分に 知らぬ武士が訪ね 腹を切る決断もつかずいつ明るみにと恐れ 拙者の不始末を引受けてくれたと 奉行役所に抜擢され嬉しく こんなに誇れる事を
2021/08/12
山内正
申し上ます病間にお運び下さいと 長男が 廊下には家士等が座ってた 布団から手が ふと握ると荒れてざらざらの手が 弔問客は息子が相手している 書斎で三人程で通夜の酒を飲む まだ仏前に人の声がする お願いで御座います家士の女達に 今暫く伽を父上と息子が 自分の肉親よりも哀しいと泣くのです 形見の品をと 木綿の着古しばかり 新しい物はない 母上の身に着けた品私も妻に一枚頂戴しますと息子が 不時の出費に困る事が無かったと 何と言う迂闊だ こんな事すら 節婦は困難を戦い抜いた婦人を記す べきだ人の心に生き付いてると
2020/09/03
山内正
粗暴で強情と評判の悪い次郎兵衛 お元で無ければと頼まれ阿市は断る 祝言の終わった後で客が来た 飲み直すと騒いだ 隙間から覗く 次の日も 直すものかと意地を張る 具足等今は要らぬ故と妻に 私が小太刀を使い馬にとお戯れと 夜半に偲んで来るは嫌な事と 戦がと出兵の命が来た武庫には具足は少しだけ 妻の持参品は手が出せ無いと家来に来る者だけと戦に 激戦は三日で終わった 天晴れと褒めて貰い我が身を考え 自分を無にして共に苦を乗り越えた 妻だと今になりやっと知る
2020/10/22
山内正
妻の詩に夫が関心する 昨夜のお詠みなったはこれですか 嗜みに十分でしょう 次は何を? 一辺に眠気が覚めた 部屋で塞ぐ妻が私の詩がと言い淀む 二千石の家政を切り盛りした母 妻の習いを話す息子に最後まで聞き そうですかと 座敷で恥ずかしい話を聞いて欲しい 嫁いで十年何も知らずにいました お姑様頼りに覚えましたが 姑様が亡くなりどんなに心細かったか 習いの才を褒められもしました 家政をやり夫に仕えて努めは果たしたと、大事な物が有ります妻の心です 突き上げる声で謝りました お母様と 何かいい事あったかねとお母様が
2020/09/22
感想・レビューをもっと見る