新装版 ウロボロスの偽書(上) (講談社文庫 た 27-10)
新装版 ウロボロスの偽書(上) (講談社文庫 た 27-10) / 感想・レビュー
HANA
作家竹本健治の新作の連載、そしてそれを書く日々の様子。その中にいつしか連続殺人犯の手記が紛れ込み…というメタな内容。著者の日常と殺人犯の日記は密接に絡み合うのだが、連載の方は芸妓の世界を舞台にしたバカミスで著者らしさは多分にあるのだが何か浮いてるな。と思って読んでたら、上巻最後で一気に虚実が入り乱れ始めました。あと著者の日常における交友、綾辻行人や友成純一等馴染みの作家さんが頻繁に登場してとても楽しい。ただ基本プロレスの話題中心で時代を感じる部分があるなあ。三つに分かれた話がどう絡み合うのか楽しみである。
2023/05/24
おうつき
上巻を読んだ限りだと、「匣の中の失落」を作者含めた実在の人物でやってみた、みたいな内容に思える。竹本健治本人、殺人鬼、芸者の視点が入れ子のようになっているが、何が虚構で何が現実なのか次第にあやふやになっていく。途中に挟まれるプロレス談議にはちょっとついていけなかったけど、パラドクスや量子力学、ミステリーとの向き合い方についての部分は興味深く読めた。
2020/06/04
浮遊
メタにメタを重ね更に駄目押しでもするかのようにメタを積み重ねていった結果織りあげられたのは、皆大好き現実VS虚構の終着。終わりのない連鎖は円環し、これまさに ウロボロス。ウロボロス三部作の第一弾として華々しく幕が開き、竹本健治、綾辻行人、島田荘司らミステリ界の大御所が実名で登場する。これだけでもうある種の人間にとっては垂涎ものなのでは。絶対不可侵の三すくみが互いに侵食し合い、定点がどこなのか分からなくなる。混迷を極めたところで唐突に幕が閉じ、自分は俯瞰の観察者であることを叩きつけられつつ下巻に続く。
2018/05/21
夏目みもり
殺人鬼の独白パート、竹本健治が友人たちといろいろするパート、そして竹本健治が連載する芸者ミステリパートに分かれている小説。 今回はなんと作者ご本人が物語中に登場し、その中で『ウロボロスの偽書』という小説を連載しているというという珍妙な構図です。そのため現実と虚構が入り混じり『匣の中の失楽』で味わった酩酊感のようなものを感じることが出来ます。 殺人鬼のパートですが、これは……、けっこうグロいですね💦 その残酷さ故に、殺人行為そのものに宗教的な意味を見出していく殺人者本人の心情の変化は面白いのですが💦
2020/10/20
シタン
匣だ。匣のにおいがする。人なつっこい文章でカモフラージュされた、抽象的にして高度に設計された構成。知的な青春の悲歌ふたたび。数理論理と量子力学。胡蝶の夢。文字通り現実世界を巻き込んでいる点ですさまじいスケールを感じる。 三パラレルで規則正しく進んでいくが、「連載第7回」で新しい展開を見せる。この後どうなるか、まるで予想がつかない。
2018/04/26
感想・レビューをもっと見る