哀歌 (講談社文芸文庫ワイド えA 1)
哀歌 (講談社文芸文庫ワイド えA 1) / 感想・レビュー
優希
『沈黙』に通じる短編集だと思いました。どんなに卑怯で罪深く、弱いのか神様はご存知なのですね。キリスト教の意味を追求し、人間の深層心理に潜む「哀しみ」を描き切っているように感じました。
2024/07/15
gushwell
「沈黙」へと繋がっていく短篇集。12の作品が収録されています。筆者の入院生活の経験に強く影響を受けた作品が多い。どれも人の心の中に潜む小さなエゴ、弱さ、哀しさを題材にしている。遠藤氏の弱者へ寄り添う眼差しに心を動かされる。
2019/05/06
ユリアナ
どの作品も読んだあとしばらく余韻が残り、この短編集は「沈黙の前奏曲」と著者が記していて納得。人間の弱さ、どうにもならないところを、細かく、抉り出すように表現したり、温かく見守ったり、さらにそこに優しい光を当てているところに優しさと救いを感じる。心に残っているのは、特に「四十歳の男」のさりげない九官鳥の存在。「九官鳥は首をかしげて黙って彼の言葉に耳を傾けた。」という一文は、九官鳥に崇高なイメージすら感じさせられた。しばらく頭の中は遠藤ワールドに浸っている。
2021/12/07
乱読家 護る会支持!
遠藤さんご自身が書かれているが、この短編集はあの「沈黙」の前奏曲の意味合いが強いとのこと。 実際、いくつかの短編で、長崎の隠れ切支丹の殉教の話が出てくる。 遠藤さんは、イエス自身とその弟子たちの惨めな殉教と、隠れ切支丹の惨めな殉教を、同じ文脈で語っているように思う。 「キリスト教信者は、信仰を守る為には死を恐れない」という文脈であり、遠藤さんは、そこに「神の存在」をみていたようだ。 しかし、、、 両者は、時間で1600年以上、空間では地球を半周もの距離がある。 両者を果たして同じ文脈で見ていいのだろうか?
2020/06/21
いのふみ
悪人正機とも似ているが、厳しい戒律を押しつけるのではなく、不安の只中で生きている人、未来に希望が見出せない人を救うのがキリスト教、ひいては普遍的な宗教の役目というものだ。
2023/08/29
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