そらトびタマシイ (アフタヌーンKCデラックス)
そらトびタマシイ (アフタヌーンKCデラックス) / 感想・レビュー
Bo-he-mian
スタイルを模索していた初期の貴重な作品集。『はなしっぱなし』連載終了後、五十嵐さんは読み切りをぽつぽつと描き続け、次の大きな作品までかなりのブランクが空いてしまうのだが、そこには彼の天才的な奇想力と商業主義とのギャップに悩み迷走する内面が垣間見える。この間に五十嵐さんは日本中を旅しながら岩手に落ち着き、農村で自給自足の生活を始めるのだが、そこから『リトル・フォレスト』や畢竟の傑作『魔女』が生まれる事になる。本書は、そんな五十嵐さんの方向性が固まる前の、どろどろした思考とスタイルの実験場ともいえる作品群だ。
2018/10/10
JACK
○ 繊細な絵の短編集。2002年発行。生命の神秘を描いた不思議な作品が多いが、大半の作品には明確なオチが無い。陶器作りに向いた土を借りに来る山の神様を描く「産土」、梟の雛を殺した少女が呪いを掛けられる「そらとびタマシイ」、熊殺しの少年が山の守り神になる少女と共に運命に抗う物語「熊殺し神盗み太郎の涙」、身体から砂がにじみ出てくる女性の生活を描く「すなかけ」、両親に捨てられた少女が育てる猫とパン屋の出会い「le pain et le chat」、人間が登ってはいけない神の山を描く「未だ冬」を収録。
2020/11/01
そのじつ
「魔女」上下巻で五十嵐マジックにかかった私、本書収録作の「熊殺し神盗み太郎の涙」というタイトルに惹かれて読んだ。予想を上回る酷くて荒々しく甘美な作品だったが、いかんせん短すぎた。表題作がいちばん好きだ。食欲・生命力・未練・若さ・老練さ・・・さまざまな力や欲やに直に触れた皮膚感覚を得たきもちになる。非常に気味が悪いのに、それと同じくらい強く惹かれる。少女のいのちは真っ直ぐに明日の方向を向いているのが爽快。五十嵐作品にちょくちょく登場するタイプの人物。宮部作品における本間刑事(火車)有馬老人(模倣犯)みたいな
2017/05/15
白い駄洒落王
幻想的。砂女の話など涙なくしては読めない。
2013/12/01
N島
再読。ジャンルの異なるクラフトビールを飲み比べるような至福の時間を味わえました。クセのある甘味と豊かなコク、僅かに舌を刺激するスパイスが絶妙のバランスで同居する「そらとびタマシイ」と、しっかりとした下味にホップの香りと苦味を加えつつスッキリとした後味に仕上げた「le pain et le chat」が特にお気に入りです。
2014/03/04
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