餓狼伝 8 (アッパーズKC)
餓狼伝 8 (アッパーズKC) / 感想・レビュー
半木 糺
おそらくこの巻には「愛」の本質の一端が描かれている。
月光密造者
泣き虫サクラのエピソード完結。狼狽えるばかりだった巽が、何時しか心理的優位に立ち、背後から無敵の肉体を締め落とす。その時、単なる陥没と化したはずの両眼から、止めどなく溢れる涙。
やいとや
巽対サクラ戦決着。要するに「グレート巽は人をアクシデントでは無く殺した事がある」というエピソードが必要だっただけなのに、この密度とヴォリュームが必要だった、という板垣恵介の作家としての過剰さが魅力なのだね。折れた腕でスリーパーを決める、というフィニッシュもギリギリの論理性を持っているし、その敗北に解放されるサクラの描写も美しい。母親の元に送って欲しい、という願いを巫山戯るように引き受けながら、最後の瞬間には涙や鼻水を流しながら決める巽の心情など、全てが美しい傑作。そして最後に漸く主役登場(笑)。
2024/01/13
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