劇画漂流(下) (講談社漫画文庫 た 17-2)
劇画漂流(下) (講談社漫画文庫 た 17-2) / 感想・レビュー
seer78
「劇画」誕生前夜を描く、青春群像劇。貸本屋の全盛期、大阪での老舗出版社間の闘争から、上京して独自の表現を模索する日々。支配的なパースペクティヴが確立する前の、各党派がしのぎを削る様子が楽しい。例えば、漫画に代わる表現を何と呼ぶか?名前はけっこう重要で、この巻では劇画の他に「駒画」などの案もあったことが知られる。若者同士の微妙な人間関係の描写が濃い。さいとうたかをは大いに腐されているw映画やハードボイルド小説からの影響が指摘される(ミッキー・スピレイン!)。60年安保の喧噪からの、「怒り」の一語が心に残る。
2016/01/29
よしだ
劇画という言葉の生みの親でもあるこの作品の著者・辰巳ヨシヒロさんの自伝もあり、今日私達が読んでいる多様な漫画作品が如何にして生まれたかを知ることの出来る歴史作品でもある。白土三平やつげ義春など個人的に聞きなれた名前から初めて知る名前まで、たくさんの方々が切磋琢磨して「表現」を模索していた事を知らなかったのが自称漫画好きとしてはとても恥ずかしい限りだ。上下巻だが、貸本業界の行く末など未知な部分が沢山あり、是非とも続きを読みたい!!というのが本音である。下巻のあとがきや登場人物も必読だ。非常に面白かった!
2013/06/08
電球
劇画の勃興と、その激動の流れに劇画漂流する作者を描いた一作。当時を描いた漫画として、マンガ道を補完するような読み方もでき、とても楽しめた。また、モノローグで自身の精神状態や周囲に対する俯瞰視点が導入されており、内省的で青年漫画としての魅力も強い。ただ、貸本業界の終焉など、この続きをまだまだ読みたいというのが正直なところではある。
2013/06/06
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