斬り介とジョニー四百九十九人斬り (KCデラックス)
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斬り介とジョニー四百九十九人斬り (KCデラックス) / 感想・レビュー
猫丸
当初から榎本俊二はアート志向だった。それでもギリギリまんが世界に踏みとどまっているのだが、前衛芸術との境界はかなり不分明だ。作風を支えるのはニュートン力学。とくに慣性の法則である。「Golden lucky」の頃から投出物体が描く放物線の頂点、高速切断された人体部品が宙にとどまる瞬間などを好んで描写する性癖がある。本作品はその嗜好を極限まで突き詰めて暴走したもの。これを商業誌に載せた編集者の失見当識ぶりに感謝。
2019/12/22
田氏
『ザ・キンクス』単行本化で話題の榎本俊二であるが、これまでの仕事においてもっとも「実験的」と形容しやすい作品であると思う。いや、実験的でなかったものがあった記憶もないのだが、本作はとりわけ何らかのベクトルに特化している。なにしろ、攫われた村人の救出を依頼された二人の剣客が、数百人の兇徒を斬り続ける、本当にただただ斬り続けるマンガなのである。感情表現とかいったものは、せいぜい冒頭と末尾の村人が示す程度しかない。「共感型読書」なんて言葉もある昨今だが、本書はそのような境界線の彼方から、圧倒的他者を投げつける。
2024/02/29
明智紫苑
多分、若い方が「斬り介」で、ヒゲのおじさんが「ジョニー」なのだろうが、仮に『ファイブスター物語』の騎士が地球に現れて大暴れするとこうなるのだろうな。怪作!
2017/03/08
tamako
怪作。法も情もタメも緩急もなく、ひたすら斬る。このドライさ、割と好きかも。人には勧められないけど、作品の評価とは全く別で、こういうのを好む人だと思われるのが困るので勧められないという。描写に圧倒されて見逃しそうになってしまうが、高い画力にハイセンスな構図がすごい。
2021/11/03
kanon
やはり榎本俊二の作品で何を一番注意しながら読むのかって、それは作画の正確さなのであった。「反逆ののろし」「MAGNITUNING」の様な作品が大好きなのである。360度どこから見ても、絵が噛み合っているのがよくわかる。と言うかそれ程に注意して読んでいるということで…でも期待を裏切りはしない。正確なのだ。でもこういう作品を描くのはやはり難しいらしく、労力も次巻もかかるが、それでも、時々無性にやりたくなるらしい。まあどの絵も実際はそうなんだけれどね。どの作品を見ても絵に対してのこだわりが見て取れるので、是非。
2014/09/23
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