大江健三郎全小説 第10巻 (大江健三郎 全小説)
大江健三郎全小説 第10巻 (大江健三郎 全小説) / 感想・レビュー
ykshzk(虎猫図案房)
「二百年の子供」読了。少し落ち着きたい時、”decent” な感じ、に近づきたい時に大江作品を読むと必ず心が落ち着く。今回もその試みは成功で、すとんと慣れ親しんだ森に帰れた感じ。3人組の子供達と柴犬が主人公の冒険譚。他の作品にも度々登場する森のフシギや連綿とした時間軸はそのままに、読みやすい物語となっている。船越桂の絵が小説の登場人物達の雰囲気とぴたりと合っていて、物語としての世界観作りに一役買っている。そしてやはり光さんをモデルとした登場人物は常に大江作品において、船でいうところのバラストのような役割。
2023/11/29
ブルーツ・リー
大江健三郎は、SFだろうがファンタジーだろうが、自分や自分の家族を登場させるため「自己愛」が良く言われる作家ではあるが、しかし、そこは本質的な事では無いのではないか。 本小説では、SF作品と、ファンタジーが収められているが、完全な空想なのである。 純文学としてそれらを書いた場合、よっぽど苦心しない限り、荒唐無稽な内容になってしまい、破綻が生ずる。 その破綻が、一切、無い。近未来が舞台で、実在の人物をモデルとして書いて、それでも破綻させない筆力を絶賛するべきではなかろうか。 純文学作品としての硬度を感じる。
2022/09/10
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