大江健三郎全小説 第11巻 (大江健三郎 全小説)
大江健三郎全小説 第11巻 (大江健三郎 全小説) / 感想・レビュー
ケイトKATE
どこまでが真実で、どこまでが虚実なのか読み手を惑わせる小説だった。作家K(ほぼ大江健三郎自身がモデル)が自分の半生と、Kの人生に大きな影響を与えた“ギー兄さん”の人生を回想する小説。“ギー兄さん”はKが敬服するほどの類まれな知性を持ち合わせていながら、“ギー兄さん”自身はほとんど何も成すことができず失敗の人生を送った。自分に大きな影響を与えた人物には、身近な人や世間では無名な人が存在する。Kは作家として成功したが、この成功は“ギー兄さん”なしでは成し得なかったと気持ちから回想しているのではないだろうか。
2023/06/03
ブルーツ・リー
やっと読了。 大江健三郎は、自己愛についてよく言われるが、誤解だと思う。 なぜ誤解されるかと言えば、やたら自分や自分の家族を小説の中に(SF作品にすら)書くから、自分に酔っているように思われるのかも知れないが、実際は、私小説だと思われているような作品であっても、その内容の多くはフィクションであって、この本で言えば「ギー兄さん」は架空の人物だろうと思われて、架空の人物とのやり取りなど、完全に想像の世界の話で、自己愛で、自分を小説に登場させているのでないのは明らか。 自らを客観視して、優れた小説を書いている。
2022/10/30
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