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帰れぬ人びと (講談社文芸文庫 さS 1)

帰れぬ人びと (講談社文芸文庫 さS 1)

帰れぬ人びと (講談社文芸文庫 さS 1)

作家
鷺沢萠
出版社
講談社
発売日
2018-06-10
ISBN
9784065117330
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帰れぬ人びと (講談社文芸文庫 さS 1) / 感想・レビュー

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penguin-blue

短篇が4編、そんなに厚い本ではないのに登場人物の心情や状況の描き方が巧みで、それぞれの物語が現実感を持って立ち上がってくる。そしてその舞台はまだ道路もこれほど明るく平らではなく、駅にエレベーターはなく、携帯やネットもない昭和の時代だ。作品が強い印象を残すゆえに余計、今の平成を鷺沢萌はどう描くのだろうと考えずにはいられない。作中に「(大人達は)生きているのではなく生きながらえているのだ」というくだりがあるが、生きながらえて初めてわかることをもっともっと書いてほしかった。

2018/12/03

ann

なんて硬質で静謐で包み隠さない文章を書く人なのか。これらの作品を若干20歳前後で仕上げるなんて。彼女の文章や作品を好きだと感じられる自分に安堵する。現在の「優しいだけ」の小説が読めない 好まないのは、だから仕方ない。

2022/10/04

森の三時

著者生誕50年に再び刊行された本書は、高校から二十歳前後で描かれた初期作品4編。この若さで、どうして老成した小説家が書くような成熟した世界を描けたのか、という驚きを多くの人が感じたように、私も驚嘆せざるを得なかった。けれど、巻末に著者自身の短き生涯の年譜が掲載されており、彼女の人生を眺めると、印象や理解も変わってくる。単に歳をとったからといってけっして書ける訳ではない、彼女だから描けたのだろうと。寄る辺のない者がそれでも生きていく。先日まで知らなかった作家なのに、私は深く触れられてしまった。

2018/09/09

kaoriction@感想は気まぐれに

橋を渡る ように、川を越える ように、その向こう側へためらいもせず、迷いもせず、そんな風に帰ってゆけたら。帰ってゆける場所があったなら。帰りたい場所を失い、帰るところも失い、僕は、私は。ただ、ひたすらに真っ直ぐを歩いてゆくしかないのか。今年、著者生誕50年を記念して再発刊された初期作品集だ。帰れぬ人々は 帰れぬのではなくて、帰る場所を見失なってしまったんじゃないだろうか。歩いてゆくその先に、「帰れる場所」は きっとあるのだ。鷺沢萠はだいぶ遠いところまで ひとりで歩いて行ってしまったけれども。

2018/09/30

アコ

4篇収録。著者7冊め。高校生の頃に書いた文學界新人賞作「川べりの道」など初期のもの。これまで読んだ著者本のなかで最も純文学の匂いがしたし、蒲田や大鳥居、葛飾など京急線沿いの下町の空気を汲み取る細やかな描写にポツポツ知る著者の生い立ちを感じる。デビューまもなくでこれはお見事!と思いつつ、エンタメ性を求めてしまうのが正直なところ。そういう意味で過去に読んだもののほうが沁みた。巻末の実姉によるメッセージと年譜、ああ…とまたしても早逝が悲しい。

2019/08/29

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