掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集
掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集 / 感想・レビュー
青乃108号
これほど頭に入らない本は初めてだった。確かに読んだのに、何も記憶に残っていないという。文字はまるでセラミックのツルツルした板の上に羅列されたそれのよう、読んでも読んでも目が文字の上を上滑りするばかりで俺は拒まれ続けた。ああ苦しい。ああしんどい。もう止めよう今止めよう。本当に辛くて長くて得る物は何もない読書だった。最後はヘロヘロになって倒れ込むマラソンランナーのように本をペタン。と閉じる。諦めない心。最後まで良く頑張った、と我ながら思う。気分はロッキーバルボア、エイドリアンはどこだ。
2022/03/21
やいっち
一気に読めた。少しは小説も読んできたが、こういった作風の小説は初めて。身体的な障害やら親の都合での頻繁な転居、看護婦の体験を始め数多くの仕事、人との関りの輻輳ぶり。いろいろ彼女の作風を形成した背景は数え上げられるだろうが、説明はしきれないだろう。彼女自身が作り上げた世界。常に具体的現実と接触していて、どんな細かな瑣事も想像の翼の発端となる。想像は飛ぶのだが、彼女なりに経験したリアルからは食み出さない。小説の何処で切り取っても血の出るようなリアル感がひしひしと伝わる。読書体験として残るのは間違いない。
2019/11/29
seacalf
人生そこそこ長く生きていると、どこかで出くわすものだ、壮絶な半生を経験しながらもカラッとした笑顔で笑いかけてくれるタフで美しい女性が。このルシア・ベルリンのように。内容は結構悲惨なものもちらほらあるのに多くの読者を惹き付けてやまないのは、どこか文章にオースターやミルハウザーのような魔力的な力を秘めているからか。日常の些末な事を洗い流して、彼女の語る話にはどっぷり浸らせてくれる何かがある。お上品に生きてきただけでは計り知れない物語を、数奇な生涯を送った彼女のきらめきとタフな体験を、あなたもとくとご覧あれ。
2019/12/21
まこみや
一つ一つの短篇をゆっくりと味わった。その力強く的確な言葉から生まれた「物語」の実感に打ちのめされた。ルシア・ベルリンの人生と作品については、すでにリディア・デイヴィスと岸本佐知子さんが極めて正確に語っていると思う。拙い語学力だけど、ベルリンの作品のいくつかを原文で読んでみたくなりました。
2019/09/08
ネギっ子gen
本年収穫本。訳者の「ルシアの書くものならどこからでもえんえんと引用しつづけられる、というリデァ・ディヴィスの言葉に全面的に賛成」に仲間入り。「読む快楽そのものだ」も同意。読み終えたら付箋だらけ。書名の『掃除婦のための手引き書』がいい。「掃除婦たちへ:原則、友だちの家では働かないこと。遅かれ早かれ、知りすぎたせいで憎まれる。でなければいろいろ知りすぎて、こっちが向こうを嫌いに」。『ママ』も良し。「愛があれば幸せになるっていうのはローマ法王が流したデマ」と。トランプに勝るフェイク・ニュース捏造者は法王か。
2019/09/30
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