井上陽水英訳詞集
井上陽水英訳詞集 / 感想・レビュー
なる
邦楽のシンガーソングライターの中で、歌詞の意味を理解するのがいちばん難しい人だと個人的に思っている。あれだけ平易な言葉で、でも表面上でだけでは真意が理解できない、そんな日本語のトリックスターの歌詞をストレートな英訳にするというなんともチャレンジブルな試みをロバート・キャンベル御大が行う。とは言いながらロバ氏、井上陽水の言葉をとても丁寧に理解して読み解いていて、本人ともしっかり対話しながらそのニュアンスの妙を取り入れるのにとても苦心しながら作り上げている。その真摯な姿勢や、井上陽水論とも言える内容は刺激的。
2020/07/30
aloha0307
陽水さんの楽曲は確かに”生と死を湛え、虚実の皮膜の間”にいるようで最も英語に訳しづらいと思っていましたが、キャンベルさんはそのニュアンスまで見事に表出してくれました✿ 夕立♬ は、夕立のまさにその瞬間に投げ込まれたようです。傘がない♬ 陽水さんは、主語は”I:私” を「それは違う」と断固主張され、人類の傘のイメージだそうです。いっそセレナーデ♬は a just_so serenade。いっそ と soを掛けてます(旨い!)盟友ユーミンは「井上陽水はうなぎである」と喩えた。言い得て妙だなあ✿✿
2020/02/21
くさてる
ロバート・キャンベルによる井上陽水の英訳詩集。といってもただ訳詞が並んでいるのではなく、それらの詩を訳すにあたっての考えや詩の解釈、選曲されたものに限定しない井上陽水の楽曲についてまで語られています。わたしはそれほど熱心に陽水を聞いてはいないものの、その歌詞が英訳される過程で通り過ぎる解釈の豊かさがすごく面白いと思いました。曲を聞きながらだとさらに良かったです。
2019/08/24
Shimaneko
日英翻訳の微妙なニュアンス差や訳語選びの葛藤過程を、英語ネイティブの視点なのに日本語で読めるという超不思議な良書。キャンベルさん、素敵♡
2020/04/29
山猫
非常に興味深い試みであり、論文であり、対談である。 が、前書きだけでめげてしまった。詞の方は馴染みのあるものだけ拾い読み。中島みゆきと陽水は「詩として読める」と言われて久しいが、訳詞は音節数が少なく意味のある単語の多い英語から、一語の音節数の多い日本語にするのは難しいと言うが、逆の場合は余計なことまで盛り込んでしまって「うるさい」歌詞になってしまいがち。が、彼の訳は原詞の味わいを損なわないのみならず、そのまま歌えるようにもなっている。これは相当に骨が折れたろう。陽水ファン必携の一冊。
2020/02/19
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