幕末物語 失蝶記 (講談社文庫 や 78-7 山本周五郎コレクション)
幕末物語 失蝶記 (講談社文庫 や 78-7 山本周五郎コレクション) / 感想・レビュー
キムチ
『日が当たらぬ』人々を細やかな視線で見つめた幕末モノ。氏は近代も現代ものも無名人を好んで書く‥そこがフアンである所以。長州・出羽・甲斐等が舞台。生を全うする心情に種々の想いが錯綜する。中でも「失蝶記」は傑出。失聴となった谷川が信じたはずの男へ向けた刃の行方は?登場する男女は若者が殆ど。時代は激動の揺籃、運命の奔流に流されて行く・・木の葉の如く散った命。ひたむきな想いは胸を打つ。「城中の霜」の左内。眉目秀麗、端正な容貌と秀でた才・・故に疎まれたか?白いうなじに刃が振り下ろされる瞬時、よぎった想いは?傑作揃い
2019/05/31
AICHAN
図書館本。短編集。相変わらず美しい日本語。だけど、どの短編もイマイチだと思った。いかにもこしらえたというようなストーリーとありきたりのストーリー展開に物足りなさを感じた。
2019/12/29
Book Lover Mr.Garakuta
山本周五郎版 幕末記 異色の短編集で、のちの作品にも、影響を残した作品だ。編集後記によると彼の描く幕末期は勤皇党より言われている。彼の全作品は読んだことがないし、幕末期の政治情勢等には明るくないので、何を持ってして勤皇党よりと指すのかは分からないが面白い作品ではある。当時の世相を表す日本情緒たっぷりの本で、読んで損はしないと思う。特に歴史に興味のある方は一読してもよいと思います。短編集ながらその分濃ゆい作品集だと私は感じえて妙を得ています。JR立花駅直の立花商店街小林書店さんで、購入。
2019/01/18
まなぶ(本コレクター)
龍馬も晋作も有名な志士は出てこない。山本周五郎ならではの普通の人間を通した幕末記。短編8編。動乱の世に生きる人々が瑞々しい。
2019/04/04
jinginakineko
幕末を舞台とした短編集。一貫して勤王派は正義、佐幕派は悪として描かれ、最初は古めかしさを感じた。しかし、一作除いてすべて戦前の作品であることに気づいて腑に落ちた。いわゆる「英雄」が出てこず、著名な登場人物は井伊直弼と橋本左内だけであることが、この作家の卓越したところだろう。女も男も己の信じる道を少しもぶれず貫く。当時の読者は、大将や大臣に出世しなくても立派な生き方があることに励まされただろう。それはある種の諦念だったかもしれないが、庶民の希望ではあった。だからこそ山本周五郎は人気を保ち続けたのだろう。
2021/09/24
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