手塚治虫と戦時下メディア理論 文化工作・記録映画・機械芸術 (星海社新書 144)
手塚治虫と戦時下メディア理論 文化工作・記録映画・機械芸術 (星海社新書 144) / 感想・レビュー
ぐうぐう
『手塚治虫と戦時下メディア理論』は、過去十年ほど、大塚英志があちこちの媒体に掲載した評論を改稿し、一冊にまとめたものである。複数の短い評論が一本の長い評論になるとは、それだけ大塚の主張が、少なくともここ十年、ぶれていないことの表れだ。要点はシンプルで、戦後の手塚漫画が、戦時下の映画理論、文化工作の影響を受けて誕生したとする説が繰り広げられている。大塚の著書に接してきた読者には、お馴染みの理論だ。(つづく)
2019/05/13
田中峰和
鉄腕アトムや手塚治虫が戦前の軍国教育の賜物なのがよくわかる。巻末でインタビューを受ける牧野守は、戦時下の思想教育の一環で強化された記録映画、文化映画のスタッフだった人物。鉄腕アトムの実写版では助監督、アニメ版でシナリオを依頼されるも没にされる。実写版がアニメに先行したことが認識できたが、戦時下と呼ばれるのが、15年戦争と著者が繰り返すような長期間だったことに驚く。少年向けの漫画や映画にしても、科学技術に対する憧れをもたせ、国力増強に利用した者。その影響をうけたのが手塚本人だ。北朝鮮はその路線のママなのだ。
2019/04/11
いか
無理を感じる憶測も多いが、面白い情報も多く、「機械化」といった視点の取り方もかなり魅力的。その分、なぜそこまでして手塚の話ということにするのか、大塚英志らしいが…。明らかな誤植が多く、特に書き下ろしの第1章は一文に同じ副詞句が二度出てくるなど読みにくい文章が多い。以前読んだものもそうだったが、星海社新書はあまり校正しないのだろうか。
2019/11/13
Y.C.STUPID
手塚治虫が映画理論を実践して創作していた可能性を突き止めていく下りが楽しい。歴史に埋もれた作者たちの文化工作者としての一面が浮かび上がる圧巻の論考。
2019/09/11
山盛元気
すごく面白かった。ただ残念なのは手塚の直接的な映画理論への言及がとれていないから全て推測にすぎないこと。状況証拠的に戦時下映画理論から影響受けたのは間違いないだろうが著者が言うほどかは留保すべき。とくに今村の流線的モンタージュと新宝島改訂版の関係性は眉唾物。そしてレイヤー構造の映画理論からの発見は流石にむりくり感が。だってそもそもエイゼンシュタインがそんなこと言ってないからね。ただスーパーフラットの方が適当だし著者の言うように何故海の新兵でマルチプレーンを選んだのかはもっと研究対象にすべき あと牧野守凄い
2019/04/13
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