罪の声 (講談社文庫 し 104-5)
罪の声 (講談社文庫 し 104-5) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
塩田武士は初読。本書は1984年~85年にかけて起きた「グリコ森永事件」の資料を駆使して、あり得たかもしれない事件の真相、あるいは犯人像を描き出そうとする試み。文章・文体はけっして練達したものとは言えないが、真摯に向かい合う姿勢は好感も持てるし、また成功をもたらしてもいるだろう。構成上も工夫が凝らされており、例えばプロローグの置き方や、当事者(かも知れない)の甥と新聞記者の2方向から事件の解明に向かう手法などは他にあまり類を見ないもの。そして、何よりもいいのはその視点の暖かさと、他者への信頼とである。
2020/05/03
ミカママ
昭和のアイコンである未解決事件の真相を、フィクション仕立てにした作品。新聞記者と、犯人側の身内が二本立てで追うという視点と、犯人の目的の多様性が、残念ながら読み疲れを起こさせる。関西弁で飄々と進む構成は好き。ことに新聞記者の鳥居がいい。こういう頭も会話もキレッキレな男子、クラスに一人はいるんだよな(笑)事件の内容はほぼうろ覚えだが、阪神の優勝は覚えてる。当時の彼がファンだったので。
2020/03/12
ehirano1
最終ページに著者から本書は「子供を巻き込んだ事件なんだ」という強い思いがあったと述べられていました。本書はその強い思いがビシビシと伝わって来て、終章辺りはもう涙無しではいられませんでした。一方で、社の企画とはいえこういったビハインドストリーに果敢に挑み、隠された悲劇を放置しない漢達がいたことを小説の中であっても大変嬉しく思いました。その意味で、阿久津が本件の担当になったのは必然だったのかも、そしてこのビハインドストリーに阿久津の上司は薄々気付いていたのでは(だからこそ阿久津を選んだ?!)、と思いました。
2023/12/10
白いワンコ
昭和の大企業恐喝事件をモチーフにしたフィクション小説。いくつか偶然が重なったとはいえ、未解決事件がここまで鮮やかに甦る様に違和感を覚えるが、本来の姿が明快に示されるという点で不快ではない。そして来年の映画化が決定しているそうです。このボリュームをそのまま再現するのは難しいでしょう
2019/06/19
そる
はじめは少し読みにくいと思ったものの、途中から真実へ近づいていくほどにスリリングで目が離せない!グリコ・森永事件は犯人や目的など分かっておらず、この話は途中から創作だけれど、本当にもしかしたらこんな真実だったのでは。子供を事件に巻き込んで未来を潰してはいけないという強いメッセージを感じた。大人に振り回された子供は陽の当たる道を歩けない。涙が出た。辛いだろうな、こんなの。「俊也は耳を塞ぎたくなった。真相に迫りたいという思いより、逃げ出したい気持ちの方が大きかった。娘を持つ身として、耐えられない話だった。」
2020/04/05
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