掌篇歳時記 春夏
掌篇歳時記 春夏 / 感想・レビュー
しゃが
近頃、懐かしく見聞きするようになった美しく、四季を感じる七十二候をテーマに春夏を紡がれた掌に収まるような十二篇の短い物語。瀬戸内寂聴「麋角解」からはじまり、絲山秋子、伊坂幸太郎、花村萬月、村田沙耶香、津村節子、村田喜代子、滝口悠生、橋本 治、長嶋 有、髙樹のぶ子、保坂和志「腐草為螢」まで作家さんもすごい。どの作品もシュールさもあり、生々しくもあり、不思議な作品の数々だった。短く物足りなさもあるが、お二人の村田さん、橋本さん、花村さんが印象的だった。秋冬編にどなたたちが紡がれるのかが愉しみ。
2019/05/31
よこたん
“今日一日の中で目にとまった情景や、気づいた旬の兆しこそが、今日の季節ともいえるのではないでしょうか。” 季節の名前の細やかさがしみわたる。二十四節気の、啓蟄は知っていても、七十二候の、桃始笑(ももはじめてわらう)とか知らなかった。春夏の季節の名前に寄せた十二人の作家さん方の小さな作品たち。橋本治さんの「牡丹華」、長嶋有さんの「蛙始鳴」、高樹のぶ子さんの「蚕起食桑」が印象的だった。ちょっと不穏で、さみしいような中にふわりと漂う季節の兆し。村田沙耶香さんの「土脉潤起」は、やっぱり独特すぎるー。
2019/07/28
tomi
「二十四節気」をテーマに、「七十二候」をタイトルにした掌篇競作の前篇。この本には冬至から芒種まで、12人の作家の作品を収録。「群像」の企画で、純文学系作家が並ぶなか、伊坂幸太郎の作品がまさかの一番の難物。村田沙耶香はいつもの独特の世界観で異彩を放つ。ベストは小学生の視点で描いた長嶋有「蛙始鳴」と橋本治の遺作(橋本さんの小説はおそらく初めて)「牡丹華」。
2019/08/29
かんやん
季節のようなものであっても、テーマとかお題を与えられた掌編アンソロジーはやっぱり面白くない、化学反応なんてないのかと読み進めた。「さわしかのつのおる…」「何それ、お経?」なんてわざとらしい出し方(寂聴)、「雉初めて鳴く、というのがあるんだ」(糸山秋子)も同様。津村節子など、地の文で長々と説明している。皆さん、なかなか苦戦しておられる中、出色は村田喜代子、ボロギレの展示を観たことから始まる老姉妹の思い出話のイメージの鮮烈さ。それから、長嶋有の子ども視点から見た世界。小さいけどね、言葉が活きてるんです。
2024/07/30
ハミング♪♪@LIVE ON LIVE
伊坂さんの「鶏始乳 (にわとりはじめてとやにつく)」目当て。なんとも不思議なお話。一体何を暗示しているんだろう。他もなかなかクセの強い話が多かった。二十四節気七十二候とは関係なく、インパクトというかパンチのある話が多く、短編なのに、濃厚な余韻を残した。
2020/01/21
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